ただし、これに対して「もういい加減にしろ」という声は、全国津々浦々から上がり始めています。私はその代表は、オール沖縄体制が成立した沖縄の闘争だと思います。あるいはこの写真、よく見てください。実は私が写っているんです。福島の原発事故に関する訴訟です。この訴訟は、非常に私は重要なものだと思っているので、応援しているんですけれども、なぜ重要かというと、単にお金で解決したことにするということじゃなくて、筋を通せということを要求しているんです。
それは当然、だから原発推進政策の見直しの要求にもなるわけですが、要するにこれは憲法で謳われているところの「国民主権」ということを、どうやって取り返すかという運動なわけでもあります。こういった体制全般に対する本格的な異議申し立てが出てきている。
そういう中でNDの実践とは、いったい何なんであろうかと言えば、私が今「これは、戦後の天皇制なんじゃないですか?」と申し上げた「特殊」な対米従属を支える構造の中核部分を、きわめて実践的に解き明かしていることだと思います。
それが例えば、本の中で紹介されている、ワシントンの日本コミュニティです。これへの参入条件は、以下の3つであると、ジョージ・ワシントン大学教授のマイク・モチヅキ先生が指摘しておられるということが紹介されています。(1)日米安保体制の重視、(2)米軍のアジア・太平洋地域でのプレゼンスの維持を支持、(3)自由貿易の推進とあって、これ、要するに現状維持ということです。これに賛成しない奴は、門前払いするよということだし、それはつまり実質的な権力へのアクセスから遮断するということであり、影響力を絶対に持たせないようにするということです。
これはどういうことかというと、現状を無限延長させようということであって、言い換えればそれは、既存の日米関係を天壌無窮(てんじょうむきゅう)のものにしようということです。ですから、私は日米関係とは新たな天皇制であり、戦後の国体だと申し上げているわけです。
猿田さんが取り組まれているNDの実践というのは、まさにその中核部分に浸蝕するオルタナティブを提示している。そういう実践だと思うのです。私は理論的なこと、あるいは歴史的な分析をやっている。これは意見の表明であると同時に戦いでもあるわけですけれども、そのより実践的な同志として、NDの実践はあるんだと、私は勝手にそういうふうに思っています。今後も実践と理論の間をお互いにフィードバックしながら、より大きなうねりをつくり出していきたい。そのような決意を述べたいと思います。
猿田さんが、ワシントンでたった一人でロビーイングを始めたという話を最初に伺ったとき、正直なところ、何を言っているのか意味がよくわかりませんでした。私のイメージとして、海外でのロビー活動などというややこしいものは、企業や官庁の確たるバックアップがあって、組織的にしか行えないものだと思っていたからです。こんな、できるわけがないとみんなが思うようなことを平然とやってしまう。それは本当に驚きでした。
先ほど堤清二さんの「大変な時代になります」という言葉をご紹介しましたが、この言葉には続きがあります。堤さんは、「大変だけれども、そんな時代にこそ人が輝くんだ」とおっしゃっている。まさに堤さんが予言した、「輝く人」がここにいるのです。改めて、著書ご刊行、おめでとうございます。ありがとうございました。