国際社会には、ルールを強制的に守らせる「警察官」は存在しない。そのため、今回のロシアのようにルールを守らない横暴な国家が現れると、どうしても「力には力で対抗するほかない」という考えに流れがちである。だが、こういう時こそ、「法の支配」に基づく国際秩序を守るために、世界は結束しなければならないと思う。
国連は、5000万人以上が犠牲となった第二次世界大戦の惨禍の中から生まれた。この戦争で「侵略者」となり、アジア・太平洋地域の人々に甚大な被害を与えた日本には、国連憲章に基づく国際秩序を守るため、他の加盟国以上に努力する歴史的な責任がある。このことを、私たち日本人は忘れてはならない。
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中国は2012年、漁船や政府公船を使ってスカボロー礁の実効支配をフィリピンから奪取した。これに対してフィリピンは、国連海洋法条約に基づいてオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴し、中国の領有権の主張には国際法上の根拠がないとする全面勝訴判決を勝ち取った。このようにフィリピンは、中国の「力による現状変更」に対して国際法で対抗している。