中澤 それはなかなか難しいですが(笑)、どうしたら財源の確保と、それから実際に、サービスを減らさないでいけるか、それを議論しないといけないですね。これからは財務省主導で、社会保障費全体の削減がどんどん進んでいきますから。
藤田 それには「税金というのは皆さんの生活の中で、こんなふうに使われているんですよ」と、国が税務署みたいなことを言わないといけないんです。そして、その使い道を国民も知らなきゃいけない。日本人は税金に対しての合意形成が、本当に弱い国なので。
中澤 それは、ずいぶん前から言われてきたことですが、何十年経ってもあまり変わりませんね。若い人のほうがむしろ、税金に対する意識が少ないように思います。
藤田 以前はそんなこと言わなくてもよかったんです。企業も経済成長していたし、家族もちゃんといたし、地域もある程度豊かでしたから。でも、今はもう経済は成長しないし、人口は減少するばかりだし、生活は苦しくなるという、そういう時代なんです。
だから、税金の財源や使われ方を、意識しないといけない時代になったんです。近代史上初めてじゃないですか? 税や社会保障がこんなに重要なんだって気づき始めた時代は。
中澤 ただ、まだ、ピンと来ていない人が多いようですが。
藤田 なるべく取られる税金は少ないほうがいいってね(笑)。保険料も同じですよ。負担なく安心を買うことができるというのはあり得ない話ですから。応分の負担を真剣に議論して、社会保障を整備したいと心から思っています。
本当の意味でのパラダイムシフトが必要
中澤 納めたくない理由には、国に対する不信感があると思うんです。藤田 あります、あります。政治家に対しても行政に対してもすごく強いです。でも、どこかで、この負のスパイラルを絶たないといけない。それには、まず、ちゃんと税金を払わないといけないと思うんですね。どう考えても、2015年時点(2015年10月1日現在)で高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が26.7%という中で、よく維持しているというくらい、国民負担率は低いです。だから税金は、北欧並みとは言わないけれど、ヨーロッパ並みに段階的に引き上げ、それを確実に社会保障に回していく。そして、「税金をこれだけ払っても生活は楽になったよね」という感覚を取り戻したいんですよね。
中澤 現在の年金制度も、経済成長という前提があって成り立っていた。しかし、そういう時代ではなくなったということに、気がつかないといけないですね。
藤田 そうです。本当はちょっと苦しいけれど、税金を少し上げないと……。
中澤 ただ、政治家は言い出せません。
藤田 そうなんです。これまで消費税を上げることで、政権を失うことも起きていますから。税金を上げると票を失うのでは、誰も怖くて議論できないですよ。
中澤 あと安倍さんを含め、政治家には明るい未来だけを語るという、悪い癖がある(笑)。
藤田 そうそう、何よりも嘘言っちゃ、ダメだと思うんです。正直に民主的に議論ができるように国民を信頼して情報を出してほしいと思います。政治家と国民の相互不信感は根強いのでしょうね。
中澤 そういう意味で、社会保障に関する、国民的な議論が必要だということは、実はあちこちで言われているんだけど、まだ始まっていません。藤田さん、始めてください。
藤田 始めようと思って、いろいろ議論を仕掛けているんですけど……。税金の議論になると、もう、右から左まで、ぐちゃぐちゃになって、まとまらないんですよ。
だから僕はこんなふうにまとめたいんです。税金というのは、社会のために使われています。社会保障費が必要だというのは、合意できますよね。だったら、税金っていうのは必要ですよね。じゃあ、全体的に少しずつ引き上げ、社会保障費に回しましょう……と。このくらいまでは、合意できると思うんですよ。誰がどんなふうに負担をするのか、という各論の議論は脇に置いて、その手前の総論の話です。まずは税金の意味や増税による社会保障予算の確保くらいは国民的に合意したいのです。急がずに総論からの合意でいいのです。これすら貧乏な人からお金持ちまで、みんな「税金反対」「税は1円でも安く」ですから話にならないと思います。
僕らは、そろそろ覚悟を決めないといけないんです。税金を上げて社会保障に回し、生活インフラをちゃんと整備していけば、低成長の時代でも年金を含めて社会保障を維持できる。安倍さんの言うパラダイムシフトではないパラダイムシフトを本気でやらないといけない時期に来たんです。パラダイムシフトって、ずっと言われているんですけど、初めてじゃないですか、本格的に福祉社会への転換をやらないといけない時期になったのは。
中澤 消費税に関しては、上げてもいいという高齢者は結構いるんです。もしも社会保障費に回してくれるんだったらって。
年金だけではなく、医療保険、介護保険制度を含めた社会保障を、どう若い世代に残していくか、というのは大きな問題です。そういう意味では、世代を超えた社会保障に関する議論が必要です。藤田さんには推進役になってほしいと思います。
今日はありがとうございました。