二重国籍については、安全保障上の議論もあり、海外に移住した国民にのみ認めたり、議員資格に制約を設けたりする国もある。しかし、二重国籍が海外に流出した高度人材の帰還や投資・起業を促進し、長期的な経済発展につながるという側面は広く認知されており、世界143カ国で二重国籍が認められているという事実も、それを端的に示していると言えよう。
日本においても、高度人材の海外移住そのものを妨げることはできないが、制度的インセンティブや二重国籍などを含めた包括的な頭脳循環政策を採ることで、海外移住者のモビリティを高め、日本社会・経済により貢献しやすくすることは可能である。日本における高度人材の海外移住志向が中国やインドよりも高いこと、また実際に海外永住者が増えていることを鑑みると、日本でも人材流出への対応を真剣に検討する時期に来ているのではないか。すでに文部科学省で研究者の循環を促進するイニシアティブが採られてはいるが、より広範な高度人材の循環について産官学で連携しつつ議論を進めていくことが重要であると考える。
高度人材
高度な知識や技能を有している人材