また、自動車メーカー、電気メーカー以外に、グーグルやアップルといったIT企業も自動運転システムの開発に積極的な姿勢を見せている。
現在の自動車は、内燃機関を主動力としながらも完全に電子制御化された状態にあり、電気モーターとの複合動力となるハイブリッドカー、完全にモーター動力となるEV(電気自動車)など、自動車に占めるエレクトロニクス/エレクトリックデバイスの重要度は非常に高いものとなっている。自動車以外、他分野の産業が自動運転や自動車の開発に乗り出せるのはこうした理由によるものだ。
課題は法律等ソフト面の整備
こうした専門の異なる多数の企業間で、自動運転に関する共通認識を持つため、ITS世界会議が定期的に設けられている。これは、ITSの関係者が集まり、交通諸問題の解決とビジネスチャンスの創出・拡大に向けた議論、発表を行う場で、1994年にパリで第1回が開かれて以降、毎年、世界各地で開催され、現在では100カ国以上から参加者が集まる国際会議となっている。ただし、規格などに関しては、メーカー間、業種間それぞれの利害関係が発生するため、なかなかむずかしい側面をいくつか抱えているのが現状である。
自動運転は、ハードウエア面では実用化のめどが立った状況だが、これにより法整備が急務となってきた。現在の法律では、運転者が車両の運転に関する全責任を負うため、自動運転が実施されると責任の所在が不明となるからだ。極端に言えば、運転者不在でも自動車の稼働は可能で、運転者が搭乗していても運転以外の作業を行っていたり睡眠状態にあった場合の事故などにどう対処するかという問題である。また、これは1国の国内問題ではなく、多国間で自動運転に関する共通認識を待たなければならない。自動車の運転を規定したジュネーブ道路交通条約(1949年作成)やウィーン道路交通条約(1968年作成)といった世界規模での国際条約の見直しも必要で、こうした問題を解決した上で初めて自動運転の実用化は可能となる。
自動車文明のひとつの到達点と見なせる自動運転の実現だが、これが可能になると自動車のあり方、形態そのものが現在とは異ったものに変化していくことになるのだろう。
駐車支援システム
自動車を取り扱う上で苦手意識が強く、実際、難易度の高い運転作業が駐車である。限られた駐車スペース内に車両を導くため、後退中のステアリング操作が必要とされ、場合によっては障害物をよけながらの煩雑な運転操作も要求されるからだ。この問題をメカニズムの力によって解決しようとしたものが駐車支援システム。そのもっとも原点的な機能が後退時に後方を映し出すバックモニターだ。この機能を発展させ、後方監視カメラとして駐車スペース(区画分けの白線など)を認識。画像一致の原理を使い駐車スペース内に車両が収まるようステアリング操作を自動化し、さらに車速を微低速域で自動制御するスロットル開度機能を組み合わせることで、駐車に関するほぼすべての運転操作を自動で行うシステムとして実用化された。なお、技術的には可能だが安全性確保のため、ブレーキだけはドライバー自身が操作するシステム構成となっている。
車間距離維持システム
前走車と自車の車間距離を自動で一定、適正に保つシステムで、高速道路や自動車専用道など、速度を一定にした走行が可能な交通環境での使用を基本としている。システムの構成要素は、車間距離を検知する測距装置(レーダーなどが一般的)と自動操作による速度調整装置(加減速=スロットルバルブ開閉機構、減速=自動ブレーキ)を組み合わせて機能させるもので、一定の安全車間距離を保つよう、車間距離が縮まった場合には自動ブレーキによって適正車間距離まで回復させ、逆に車間距離が広がりすぎた場合には車速を法定速度内で引き上げ、やはり適正車間距離を保とうとするシステムだ。
緊急時自動ブレーキシステム
測距装置と速度調整装置を組み合わせた、自動車間距離維持システムの一機能とも言えるもの。走行レーン上の前方にある障害物(停止状態の前走車も障害物として見なされる)を検知し、それとの衝突が避けられないと判断された場合に、衝突時の衝撃(エネルギー)を可能な限り小さくするために自動で急制動を行うシステムだ。自動で行う急制動自体はそれほどむずかしいものではなく、むしろ不意の急制動で予測されるスピン、横転、転倒などの発生を防止するABS(アンチロック・ブレーキ・システム)や車両挙動安定装置の標準装備化によって実用化が可能になったシステムでもある。
車両周辺の監視システム
自車周囲の交通状況や路面状態をカメラやそのほかの検知装置によって把握(モニタリング)するシステム。単独機能の例としては後退時のバックモニター、赤外線を使った夜間暗視装置、レーダーを使った障害物検知装置など、警告装置と連動してドライバーに注意を促すシステムとして実用化されてきた。自動運転システムの構築においては、走る、曲がる、止まるの基本運動を制御する重要な車両情報となるため、より高い精度、より速い情報処理能力が求められている。