地盤陥没への対策
地盤陥没への対応の難しさの一つに、陥没現象は前兆なしに突然起こることが多い、ということがあります。地表から気付くことができるような前兆をともなってじわじわと陥没していくのであれば、それに巻き込まれないように避難したり通行規制したりという対応策を取ることができます。しかし、多くの場合、地表の変状をともなわずにいきなり起こる、あるいは起こるように見えるので、人々にとって青天の霹靂(へきれき)となるのです。そこで、地下の空洞を見つけて陥没を未然に防ぐことが重要になります。地盤内空洞を見つける技術として、地表面から2メートル程度までの浅い空洞なら地中レーダー探査法が有効で、すでに道路管理に利用されています。空洞を見つけたら、土砂が流出する原因を見極めて流出元を止める、そのうえで空洞を埋める(または拡大を止める)、という対策が必要になります。原因がわからないまま空洞を埋め戻しても、土砂の流出が続いている限りは再陥没を繰り返すことになりかねません。
「写真3」は室内の模型土槽の底面に土砂が流出する開口部を設け、開口部から水を給排水することによって模型地盤内に人工的に模擬空洞を作成したものです。最初は小さな空洞が開口部直上にでき、給排水を繰り返すうちに空洞が上方に断続的に成長し、地表付近に到達しようとしています。ここで浅い部分の空隙(くうげき)を埋めたとしても、土槽の開口部を閉じて水の給排水を止めない限り土砂の流出や空洞の成長は止まりません。
起こりうる地盤陥没と向き合う
地盤陥没には二つのタイプがあります。地盤内に空洞ができやすい固有の地質・地形条件があって大きな陥没として現れるケース、そして都市部においてインフラ施設を中心としたさまざまな埋設物の輻輳や老朽化により周辺地盤の土砂が流出して空洞ができ、陥没に至るケースとがあります。特に後者のタイプは都市の成熟にともなって人間の生活圏では必ずといっていいほど直面する問題です。陥没を防ぐには、危険な空洞を見つけ、その拡大要因を取り除くことが必要ですが、地盤の中の状態を正確に把握することはそう簡単ではなく、そのための技術やノウハウの蓄積が重要なカギとなっています。