LOP-Gは、次のステップの有人月探査、さらには有人火星探査に向けて必要となる技術開発と先行する科学探査を行う拠点で、4名の宇宙飛行士が滞在する予定だ。2028年の完成を目指して検討が進んでいたが、2019年3月になって、現在のトランプ政権が「NASAの構想は進展が遅すぎる」という不満を表明し、2024年までの月面有人着陸をNASAに命令した。
このため、2019年7月現在、将来的に米国の、そして米主導の国際協力による月探査がどのような形でいつ実施されるかは、不明確になっている。NASAはトランプ政権の要求に応えるべく計画の見直しを行っているが、まだはっきりとしたスケジュールを公表できる段階ではない。検討に参加する各国も情報収集に集中している段階だ。トランプ大統領は、2019年6月に入ると、今度は月よりも火星に興味があるという発言をしており、一体この先どのような計画が策定されるかは混沌としている。
いずれにせよ、計画を加速するとなると“ニュー・スペース”の力を借りるのが順当だろう。特に、月に興味を示すブルー・オリジンは、トランプ政権の要求に呼応するかのように2019年5月、有人探査をも視野に入れた月着陸機「ブルー・ムーン」を開発していることを公表した。同着陸機は早ければ2023年にも月面への着陸を実施できるとしている。これは明らかに、米政府に対する売り込みであるし、同時に「国がさっさと動かないならば民間でやる」というNASAに対する意思表示でもあろう。
人類は有史以前から夜空にぽっかりと浮かぶ月に様々な思いを寄せてきた。もし将来、「見上げる月にはいつだって誰かしらの人がいて、活動している」となると、その思いも大きく変化し、月はより身近な場所になるだろう。が、10年後15年後にそうなるかどうかは、宇宙での活動能力を持つ国々の思惑と合従連衡次第である。
「チャレンジャー」号の事故(1986年)
1986年1月28日、スペースシャトル「チャレンジャー」号が発射直後に爆発し、乗組員7人全員が死亡した事故。
「コロンビア」号空中分解事故
2003年1月16に打ち上げられたスペースシャトル「コロンビア」号が宇宙滞在を終え、同年2月1日、帰還のために大気圏に再突入する際に空中分解し、乗組員7人全員が死亡した事故。