こうして原点回帰の精神により、新たな生命を宿すことになった「特撮」だが、本当の楽しみはこれからだ。まず、現役のクリエイターたちが本作に驚き、鼓舞されたことが大きい。恐らく2~3年後には大きな成果が――かつて観たことのない新たな映像作品の続発として実を結ぶことだろう。
そして本命は10年から20年後だ。一般向けとされている『シン・ゴジラ』を、10代前半の多感な時期に観てしまった子どもたちが確実にいる。わずかかもしれないが、その中から「未来の庵野秀明・樋口真嗣」が出る可能性が生じた。彼らは「特撮の本質とは何か」という挑戦の志に心震わせたはずだ。きっと「彼らの時代」には、最先端の技術とともに本質を掴み直し、前代未聞の映像を作ってくれるだろう。そんな「再生と継承」の扉を開いた点で、本作『シン・ゴジラ』の名は特撮史上永遠に刻み込まれるに違いない。