劇場だけでなく、オンライン配信も幅広い。ネット動画配信は、DMM.R18、GYAO!ストア、アクトビラ、GooglePlay、U-NEXT、ひかりTV、Rakuten SHOWTIME、ShowTime、Amazonビデオの各サービスがある。CS放送では、衛星劇場で定期的にテレビ放送も行われている(いずれも視聴にはサービスの登録が必要)。
また、ブルーレイ、DVDも80作品が2016年4月から次々とリリースされている。これまで封印されていた「幻の作品」を解禁するほか、初のブルーレイ化、DVDの廉価化、女優のコメンタリーの収録など、意欲的なラインナップで展開中だ。
これほどダイナミックにロマンポルノが喧伝されるのは、1988年に休止して以来初めてのことである。途中2010年に「ロマンポルノRETURNS」と題して第1作『団地妻 昼下りの情事』と『後から前から』(1980年、小原宏裕監督)をリメイクし(リメイク版はそれぞれ『団地妻 昼下がりの情事』と『後ろから前から』)、併せて過去作DVDの再発売を行ったが、今回はそれをはるかに上回る規模での復活だ。
何より、新作企画に気合いが入っている。『GO』(2001年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)の行定勲、『害虫』(02年)、『カナリア』(05年)の塩田明彦、『凶悪』(13年)、『日本で一番悪い奴ら』(16年)の白石和彌、『愛のむきだし』(09年)、『冷たい熱帯魚』(11年)の園子温、『リング』(1998年)、『怪談』(2007年)の中田秀夫という日本映画の第一線で活躍する監督たちにオリジナルで初めてのロマンポルノを撮らせるという野心的な試みだ。
世界的にも知られている5人の新作だけに、行定、塩田、中田作品が釜山(プサン)国際映画祭、塩田作品がロカルノ国際映画祭、白石作品がロッテルダム国際映画祭、園作品がシッチェス・カタロニア国際映画祭に招待されるなど、海外への波及の可能性も十分だ。これら新作が成功すれば、ロマンポルノというブランドの完全復活さえあり得るだけに、期待は高まる。
第1弾となる行定勲『ジムノペディに乱れる』(16年11月公開)は、行定映画らしい雰囲気を匂わせつつも、さまざまな女たちの間を放浪する男という昔日のロマンポルノにもよくあったパターンを生かして性愛の今日的な形を追う。
第2弾、塩田明彦『風に濡れた女』(16年12月公開)は、これまたロマンポルノの定番ともいえる性的に奔放で魅力的なヒロインに男たちが翻弄される筋立てだ。ただ、作風はあくまで塩田監督らしい起伏のあるものになっている。同作は16年8月、第69回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門で若手審査員賞を受賞した。
いずれも作家性が露わになっているのは、今回の新作企画の方向がそうだからだろう。未見だが白石和彌『牝猫たち』(17年1月公開)、園子温『ANTIPORNO(アンチポルノ)』(17年1月公開)も、行定作品、塩田作品と同じく監督自身が脚本を書いていることもあり、作家性に重点が置かれているのではないだろうか。また、女性の観客を想定しているのも昔とは異なっている。それはそれで、現在に通用させようとする新しいロマンポルノの形として面白いと思う。
その半面、5番目となる中田秀夫『ホワイトリリー』(17年2月公開)には別の角度から注目したい。ロマンポルノ末期の3年間助監督を務め、今回のメンバーで唯一その時代の撮影現場を体験している監督だけに、旧ロマンポルノとの連続性を感じさせる部分が濃厚なのではないかと想像してしまうのである。