たとえば、ラグビーワールドカップのキャンプ地・試合会場となることが決まった大分市は、今年2月、市内のベジタリアン対応飲食店を掲載したガイドマップを発行した。
掲載店数は8店とまだ少ないが、マップを監修した一般社団法人ベジフード協会代表の神田京子さんによると「昨年行われた大分市主催のハラールやベジタリアン対応に関するセミナーには30名の参加があり、ワールドカップを前に関心も高まっています」という。こうした状況を受け、「ベジフード協会」ではムスリムの理事を迎え、ベジタリアンだけではなくムスリムへのサポートにも力を入れているところだ。
「ダイバーシティということでは、バリアフリー対応かどうかということも重要と考え、マップに記載しました。これから外国人観光客だけでなく留学生や在住者も増えていくとすれば、ラグビーワールドカップの後も『どんな人でも皆が一緒に食卓を囲める』ことが求められるのは変わりません。『豊(とよ)の国』と呼ばれ、新鮮でおいしい野菜が豊富な大分で、ベジ対応メニュー日本一を目指して活動を続けていきたいと思っています」
日本食を楽しみに訪れる外国人にとって、大都市にはない、地域で育まれてきた食文化の魅力は大きなアピール材料となる。それが「おもてなし」になるかどうかは、フードダイバーシティへの配慮にかかっていると言えそうだ。
「フードダイバーシティ最前線(後編)~宗教や信条によって異なる「食の禁忌」を正しく知ろう!」に続く。
ハラール
「合法」「適法」という意味のアラビア語で、イスラム教の教義に照らして許されていることを示す。食に関しては、アルコールや豚肉を使用していないことがハラールの対象となるほか、多くの規定があるが、穀物や野菜、魚などは基本的に問題ない。
ハラール認証
イスラムの戒律に則って調理・製造されている商品であることを認定するシステム。ただし国際的な統一基準はなく、複数の団体がそれぞれの基準にそって認証する仕組みとなっている。
ハラール牛
イスラム教の戒律に則って飼育、解体、加工、販売されている牛肉のこと。
ヴィーガン
食事だけでなく革やウール、シルク等も使わない等、生活全般において動物性由来のものを使わない人を指す。食生活のみの場合は、「ダイエタリーヴィーガン(dietary vegan)」と呼ばれる。