ミャンマーに行ったのは「ミャンマーで映画を撮る人募集」というSNSでの公募に応募したのがきっかけなので、言葉が悪いかもしれないけれど最初は「なんか面白そうだし、行ってみよう」くらいのノリだったんです。でも、実際に現地に行っていろんな人と出会い、撮影したりしているうちに、ミャンマーが自分にとって大切な存在になっていった。それが映画づくりの面白さでもあると思っています。
そういう思いも経験もなしに、ただ「このネタ、おいしいから映画にしよう」と思うだけだと、映画をつくっている途中でモチベーションが折れてしまうんですよ。映画づくりってけっこうつらいので(笑)、自分ごとになっているテーマじゃないとやり通せない。そういう意味で「半径5メートル」なんですよね。
──前作、本作のテーマから、「社会派監督」と言われることも多いと思います。ご自身ではどう感じられていますか。
藤元 僕は、そもそも映画というのは、絶対に社会的なことが入ってくるものだと思っているんです。仮にファンタジー映画だったとしても、どこかで現実世界とリンクしていないと、撮る意味も、鑑賞する意味もわからなくなってしまうと感じる。その意味で「社会派」と言われるなら、そうかもしれません。
──次の映画のテーマとして考えていることはありますか。
藤元 一つは、ミャンマーから見た戦争の話ですね。初めてミャンマーに行ったときに、第二次世界大戦中、日本兵に家族を殺されて山の中に逃げたという人に会ったんです。「日本人に会うのはそれ以来だ」と言われて、いろいろ話を聞かせてもらったんですけど、そのときの経験がけっこう強烈で。日本で生まれ育っていると、どうしても戦争の話って「日本人」を主語に考えてしまいがちじゃないですか。そうじゃない、「向こう側」の人の声も聞かなくちゃいけないな、と思いました。これはすでに『白骨街道』という短編映画にもしたんですけど、改めて長編映画として撮影したいな、と考えています。
あと、日本に暮らす外国の人たちやそのコミュニティについても、引き続き取材はしていきたいと考えています。もし、それでまた映画をつくることができたら、今度はこれまでやってこなかった「日本人目線」での描き方をしたい。日本人の視点から、近くにいる外国人との関わり合いについて考えるような、そんな映画をつくりたいですね。
*映画『海辺の彼女たち』は、ポレポレ東中野ほか全国順次公開中。公式サイトはこちら。
『僕の帰る場所』
映画『僕の帰る場所』(2017年):藤元明緒監督の第1作。ある在日ミャンマー人家族に起こった実話をベースに描いた作品。日本で働く夫を残し、妻と子供たちはミャンマーに帰国することを決めた……。