アデイト 私、26歳の時に言われました……。
雨宮 それはひどい! 「ババア」や「オバサン」は、「女としての価値が低い」ということを暗に言っている言葉だと思うんですけど、フランス語にはそれに該当する言葉がないと聞いたことがあります。
アデイト ないですね。年老いた女性のことを「vieille dame」って言いますけど、これは80歳ぐらいの老婦人を指します。
雨宮 おばあさん、ですね。
アデイト そうそう。「お年寄り」っていう意味。
雨宮 日本語の「ババア」はホントにひどい言葉なんですが、一方で、女性も自分で「私、もうオバサンだから」と自虐的に言ったりするでしょ。それを煽るメディアにも責任があると思うんだけど、年齢で「年甲斐もなくそんな格好して」とか「あの年でそんなことするのはイタい」みたいに縛るのは、すごく変だし、窮屈なことだと思うんですよね。
男性に頼るのをやめよう
雨宮 私は新著の『「女子」という呪い』という本の中で、「必殺! 困った時のフランス人」という原稿を書きました。女子会なんかをしていると、日本の男性がいかにひどいかという話題が絶対出る。特に「若い女」にしか価値を見出さない風潮は若くない女性にとっては圧力で、「でも、フランス人男性だったら若さだけなんて求めてなさそう」というところから「もうフランス人しかない!」「フランス人と結婚したい!」と盛り上がる光景を何度も見ている、ということを書いたんですが、これについてアデイトさんはどう思いますか?
アデイト 日本に限らず、私の知り合いにもフランス人男性と結婚した女性がけっこういます。フランスの男性はホステスのいるクラブなんかにお金や時間をかけず、奥さんや子どもにたくさんの愛情を注ぐんです。そういう環境が、子どもたちにもいい影響を与えます。
雨宮 なんか羨ましいを通り越して、日本の女性って不幸すぎる、と改めて思います。こんな状況の中で、日本の女性ができることって何がありますかね?
アデイト まずは、男性に頼るのをやめること。私は今、自分で会社をやっていますけど、男性に頼らなくてもすごくうまくいっているし、毎日がとても幸せです。素敵な友達もたくさんいるし。
雨宮 それって結局、女性が経済的に自立するしかないってことでしょうか?
アデイト はい。そうすれば間違いなく幸せになれると思います。
雨宮 つまり、アデイトさんは男性の女性に対する意識や考え方を変えさせるのは至難の業で、それよりも女性が自分で稼いで男性に頼らず生きていくのが一番だと。
アデイト もちろん男は必要ないし、頼らなくても幸せになれる。だって、男性とランチするより素敵な女友達とランチしたほうが楽しいでしょ?
雨宮 そりゃそうだ(笑)。
アデイト 私自身、セクハラに嫌気がさして一時は自殺まで考えたこともあったけど、「男なんてもう役に立たない」と思い直してからはいろんなことが楽しくなりました。それで別に寂しいとも思わないし、一人ぼっちだとも感じません。結婚している友達にも「あなたは自由でいいな」とよく言われます。だから今の女性たちも、もっと男性から自由になればいい。「そばに男性がいないとダメ」とか「子どもをつくらなきゃダメ」とかいう思い込みは、きれいさっぱり捨てましょう。
雨宮 彼氏や旦那がいないと、「誰か紹介するよ」とか言われるけど、これって余計なお世話ですよね(笑)。今日はアデイトさんの話が聞けてよかった。ありがとうございました。
次回は5月9日(水)の予定です。
雨宮処凛の最新刊『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)4月5日発売