広がるレジ袋削減法
レジ袋を見直す運動は、買い物袋持参運動、マイバッグキャンペーンとして、北海道、兵庫などで早くから行われていたが、2001年、静岡でのフォーラム「全国マイバッグフォーラム in 静岡」を機に全国化した。愛知県豊田市は毎月20日を「マイバッグDAY」に、埼玉県狭山市では毎月2日を「ノーレジ袋デー」にし、福島県の金山町では町内全世帯にマイバッグを配布した。新潟県佐渡市では、「レジ袋ゼロ運動」を07年4月から開始している。他にも、レジ袋を断った人にシールを渡し、集めると買い物券になる「共通シール制」や「ポイント制」など、さまざまなレジ袋削減法が広がっている。例えば、東京都杉並区では、エコシール制からレジ袋税「すぎなみ環境目的税」を制定(2002年3月。実施は先送り)、1枚5円の法定外目的税を課すことを決めた。名古屋市は、2010年に政令指定都市として初めてレジ袋の有料化に着手する予定だ。国も07年4月に「改正容器包装リサイクル法」(改正容リ法)を施行し、小売業者にレジ袋を含めた資源削減義務を課している。
高い消費者の意識
07年1月に、杉並区とスーパーのサミットが実施したレジ袋有料化実験では、有料になるとたちまち客の買い物袋持参率がそれまでの30%から84%にまで高まり、店が配布するレジ袋は1日3500枚あったものが500枚に激減した。 また、05年9月に実施された「環境問題に関する世論調査」では、レジ袋を無料で配布することを禁止する動きに対し、「賛成」55.1%、「反対」21.9%、「どちらでもない」23.0%という結果が出て、国民の過半数がレジ袋見直しに賛成している。20歳代の「賛成」が46.7%である以外は性別、年齢別、地域別にかかわりなく50%を超えている。賛成理由の第1位は、「資源の消費を抑制できるため」67.0%、反対の第1位は「レジ袋は家庭で使用しており、無駄にはしていない」73.6%と、賛成と反対いずれの理由も地球環境への意識が高い。さらに、賛成者の3人に1人の36%は、すでにマイバッグを持って買い物をしている。これは、レジ袋が有料化される場合、「レジ袋のために払ってもよい費用」で「金額にかかわらず、レジ袋は使用しない」と答えた人が20.4%いるという結果からもうかがえる()。
一方で、レジ袋削減による地球資源・エネルギーの節約効果など微々たるもので、他にやるべきことがあるとの意見もある。しかし「隗(かい)より始めよ」、遠大な計画は身近な実践から始まるのだ。
レジ袋と環境問題
レジ袋は、乳幼児を含めた国民1人あたり1日約1枚、重量約7gを利用している。年間では1人約350枚、その重量は約2.4kg。総人口で計算すると、年間に約444億枚、約30万2000tにものぼる。レジ袋は、高密度ポリエチレン製(HDPE)で、製造エネルギーを含めた原油換算量は1枚18.3ml、年間55.8万klが消費される(業界推計)。さらに使用後、ゴミとして処理するエネルギーを換算して加えると、レジ袋のための原油は74万klになる(京都大学 高月紘氏)。また、焼却すれば二酸化炭素(CO2)が発生し、中程度のレジ袋1枚で約30gになる。乗用車が1km移動するときに排出するCO2量は150~200gといわれているので、レジ袋を7枚程度燃やせば同量のCO2が発生することになる。CO2は地球温室効果ガス。温暖化は現実、目先に迫った危機であり、温暖化による異常気象や種の絶滅、感染症リスクなどは予想を超えて進んでいる。
できることから始めよう
ゴミとして収集されず、焼却もリサイクルもされなかったレジ袋は、軽いので風に吹かれて散乱する。道を100m歩けば1~2枚は落ちている。これは、環境や景観を損なうだけではない。実際に奈良では、シカがレジ袋を飲み込んで死んでいる。海に流れたレジ袋が原因で、クジラやイルカ、カメが死ぬ。イタリアでは、1991年、死んだクジラからレジ袋が50枚出てきたことをきっかけに、レジ袋1枚につき100リラ(約10円)課税した。欧米各国、アジア、アフリカなど世界中でレジ袋規制の動きが進んでいるのだ。
私たちも議論するだけで傍観するのはやめよう。これからは、勤め帰りなどに何枚ものレジ袋を下げるのをやめよう。「私の買い物袋」をファッションにしよう。私たちが目先の便利さだけを求めると、地球資源を無駄に浪費し、汚染する。レジ袋からライフスタイルを見直せば、草も木も大地も、空も海も、シカもクジラも…温暖化で溶けそうな氷の上のシロクマも喜ぶ。私たちの命も助かる。若い世代の明日を守る。未来の子どもたちのためにも、私たちはできることから地球を守ろう。レジ袋をやめよう。
<参考資料>
・舟木賢徳著『「レジ袋」の環境経済政策―ヨーロッパや韓国、日本のレジ袋削減の試み』(2006年、リサイクル文化社)
・国連・気象変動作業部会・IPCC第4次評価報告書
・食品容器環境美化協会 1998年調べ
・「環境問題に関する世論調査」(2005年、環境省)
http://www8.cao.go.jp/survey/h17/h17-environment/index.html
・「我が家の環境大臣エコファミリー」(財団法人日本環境協会 我が家の環境大臣全国事務局)
http://www.eco-family.go.jp/index.html
・「?を!にするエネルギー講座」(財団法人エネルギー総合工学研究所)
http://www.iae.or.jp/energyinfo/index.html