新型インフルエンザとはどんなものか
新型インフルエンザは、カモなどの水棲野鳥が持つ鳥インフルエンザのウイルスが変異して、人に感染するようになったものである。こうした変異ウイルスには、誰も免疫を持っていないため、感染力が強く、致死率も高い。今、最も新型に変わりやすいとされているのは、東南アジアを中心に家禽(かきん)の間で流行しているH5N1ウイルスで、2003年以来、世界で400人近い発病者が出て、半数以上が死亡した。その症状は、38度以上の高熱、せき、呼吸困難、時には下痢が見られる。現在のところ容易に人には感染しないが、発病すると致死率は6割を超えるだろう。新型インフルエンザに感染した場合、症状が悪化しやすく、死亡しやすいのは10~30歳代の若い世代である。ウイルス感染により、免疫系が過剰に反応し、肺を害されるからだ。反対に高齢者は発病しづらく、また発病しても重症化しにくいと推定されている。
世界保健機関(WHO)では、新型インフルエンザについて、6段階からなる警報フェーズを作成。現在はアラート期のフェーズ3で、1968年のH3N2亜型ウイルスによるパンデミック、いわゆる香港風邪の大流行以来の危険レベルにあるとしている。
頼みの綱はワクチンと抗インフル薬
新型インフルエンザの予防方法は、ワクチン接種である。パンデミックが発生して数カ月もすれば、ワクチンが製造され、一般の人にも接種可能となるが、それまでの間はプレパンデミック・ワクチンか、抗インフルエンザ薬で予防する。プレパンデミック・ワクチンとは、現在のところ、最も新型インフルエンザになる可能性が高いH5N1ウイルスを材料に、パンデミック前に製造されるワクチンである。タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬を、予防のため服用することも考えられているが、パンデミックになってしまうと、長期間服用し続けなければならず実際的ではない。むしろ、これらの薬は早期患者の治療用に使うべきだろう。早めに服用すれば、軽い症状で治癒し、その間に免疫もできる。現在はまだ2種類しかないが、医療現場の混乱や感染者の重症化を抑えるうえで有効と考えられ、さらに数種類の薬が実用化されつつある。
抗インフルエンザ薬は、発病後2日以内に服用を始め、通常は5日間服用するが、服用時期が早ければ早いほど効果が発揮される。
家庭で備蓄しておきたいもの
現在、各企業がパンデミック時における事業継続計画(BCP)を作成しつつあり、食料品や生活用品等の入手が、継続的に不可能になることはないだろう。よって生活必需品の家庭での備蓄は、2週間分、収納スペースに余裕があれば1カ月分で十分である。調理を必要としない常温保存可能なレトルト食品や缶詰類は重宝するから、ぜひ多めに備蓄しておきたい。慢性の病気で薬を服用している人は、2週間分程度の薬を手元に置いておけば安心できるので、病院で医師に相談するとよい。パンデミックが発生したからといって、病院や診療所までが一斉に閉鎖されることはあり得ないので、常備薬なども表に記載した程度のものでよい。
パンデミックが発生したときの生活
発熱やせき等の感染症状がない限り、外出はかまわない。しかし、発病者に接触または接近すると、感染する危険性が高いので、複数以上の人々が接近する場所はできるだけ避ける。やむを得ず人込みの中に入る場合は、発病者と接触する可能性を考え、マスクを着用し、頻繁に手洗いを行う。使用済みマスクは、ウイルスが付着している可能性があるので、表面に手を触れないようにしてはずす。その後、手洗いと洗顔を十分に行う。十分な流水で洗うなら、石けんは不要。帰宅後は洗髪や入浴も入念に。ウイルスが付着している可能性のあるコートや上着は、手に触れない場所に、半日ほどつるしておくとよい。布の表面に付着したウイルスは、8時間前後で死滅する。ウイルスが存在しない場所は、パンデミック時でも安全である。誰も近くにいない屋内、公園などの屋外、早朝の市街地、自家用車での郊外へのドライブなどは危険性が低い。多くの人が集まる歓楽街の店は、感染の危険性が高いので避けなければならないが、基本的にそのような場所は閉鎖されている。同じように学校も閉鎖される。生活必需品を販売するスーパーや銀行は、通常より営業規模が縮小され、営業時間も短縮される。感染を防ぐため、ドライブスルー方式の販売や、非対面での接客に変わる可能性があるので、十分情報を得ておくことが必要である。