独身男性の増加の現状
結婚しない男性が5人に1人になったという話を聞いたことがあるかもしれません。現代の日本では、「結婚するのが当たり前」という風潮が残っていますから、インパクトのある数字だと思います。根拠となっているのは生涯未婚率です。2010年の時点での男性の生涯未婚率が、20.14%に達しました。生涯未婚率とは50歳時の数字であり、45~49歳と50~54歳の未婚率の単純平均から算出されたものです。したがって、生涯未婚と言っても独身を続けるとはかぎらず、結婚する可能性は残っています。一方、女性の生涯未婚率は10.61%です。なぜこれほど男女で差があるのかは、気になるところでしょう。生涯未婚率の推移を見ると、1985年までは女性の方が高かったことが分かります。戦後しばらくの間は、男性よりも女性の数が多い時代が続きました。第二次世界大戦で、多くの男性が命を落としたからです。
生物学的に男性の方が女性よりも多く生まれてきます。戦争のような特殊な事情がなく、医療も進歩した現代の日本では、男性の数が女性を上回るのは自然なことなのです。1975年に20代の男女の数は逆転し、これ以降、一貫して男性余りの状態が続いています。
ただ、男女の数の違いだけでは、10%もの差を説明することはできません。男女比に加えて、「夫再婚・妻初婚」の組み合わせの方が、「夫初婚・妻再婚」よりも多いことが一つの原因になっていると考えられます。女優の竹内結子さんと離婚し、最近になって再婚した歌舞伎役者の中村獅童さんを見て、「モテる一部の男が、女を独占するから結婚できない男が増えているんだ!」と怒りに震えている独身男性がいるかもしれません。
しかし、この問題については、離婚した女性に対する偏見の根強さとして解釈することもできます。結婚する意思のある独身の男性が、離婚を経験した女性を結婚相手の対象から外すことによって、男性余りの状況をさらに悪化させているのです。
結婚しないのか、できないのか
2006年、アラフォー独身男性の姿をコミカルに描いたドラマ『結婚できない男』(フジテレビ系列)で、阿部寛さん演じる桑野伸介が、「結婚できないんじゃない。結婚しないんだ!!」という名言を残しました。悲しいことですが、10年近く経った2015年になっても、このセリフは強がりだと受け止められかねない状況が続いています。男性だけではなく、女性も同様でしょう。婚活という言葉が流行して以降、独身の男女が本心では結婚したがっているとしばしば主張されてきました。その根拠となっているのが、国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第14回出生動向基本調査」で、独身者の90%近くが「いずれ結婚するつもり」と回答しているというデータです。
注意する必要があるのは、この数字が「いずれ結婚するつもり」と「一生結婚するつもりはない」の二択によって導かれたものである点です。ほとんどすべての独身者が、あたかも結婚を望んでいるかのように見える調査結果の裏には、こうしたからくりがあります。
11年に内閣府経済社会総合研究所少子化ユニットが20歳から55歳の未婚男性を対象にして実施した「未婚男性の結婚・仕事に関する意識調査」の結果からは、独身者の結婚に対する意思はさまざまであることが分かります。「結婚願望あり」(「結婚したい」「なるべく結婚したい」の合計)が46.9%ですから、たしかに、半数近い人が結婚を望んでいるようです。しかし、「結婚願望なし」(「あまり結婚したくない」「結婚したくない」の合計)が22.4%となっていますので、だいたい4人に1人は結婚したいと考えていません。さらに、態度を保留している「どちらとも言えない」が30.7%もいるわけです。「いずれ結婚するつもり」と「一生結婚するつもりはない」の二択がいかに雑であるかが分かります。
現代の日本は、男性の5人に1人、女性でも10人に1人が50歳の時点で一度も結婚していないのです。結婚するのが普通だと考える人たちは認めたくないのかもしれませんが、生涯未婚率の上昇については、「結婚する意思のない人が増えた」という極めて単純な事実を認める必要があります。
年収が低い=非モテは間違い
ただし、気になるデータもあります。同じ未婚男性でも正社員と非正社員で結婚の意思に差があるのです。正社員の場合、「結婚願望あり」が52.6%と半数を超えていますが、非正社員では「結婚願望あり」は39.6%にまで下がります。これについても婚活が必要だと騒がれ始めた頃から、年収の高い男性ほど結婚していて、年収の低い男性は結婚できないというデータが紹介されるようになりました。確かに、基本的には、年収が高くなるほど、既婚の男性は多くなっていきます。正社員の年収が下がり、非正社員も増えた日本社会では現実的ではないのですが、男性は学校を卒業後すぐに正社員として働き、家族を養い守っていくという固定観念は残り続けています。そのため、女性は大黒柱になれない男性を選ばず、収入の低い男性も男としての自信を喪失して結婚願望がなくなってしまう。要するに、年収の低い男性は女性からモテない。とても分かりやすい解説のように思えます。
しかし、この議論はあるデータの存在を隠しています。実は、どの年収でも、既婚と恋人ありを足した割合は50%近い数字になっているのです。したがって、たしかに、年収の低い男性は独身かもしれませんが、年収の高い男性と比べてモテないというのは単なる偏見であることが分かります。女性は男性の年収目当てで恋愛をするわけではないのです。
結婚のイメージに振り回されない
考える必要があるのは、結婚する意思があっても男性の年収が低い場合に、本人たちが躊躇してしまったり、親が反対したりするケースです。どうすればいいのでしょうか。結婚情報誌『ゼクシィ』(リクルート発行)のホームページに、「結婚費用」の基礎知識という項目がありました。これによれば、挙式・披露宴333.7万円、婚約関連の費用160万円、式後にかかる費用70万円、結婚式でその他にかかる費用10万円、新生活にかかる費用78万円ということです。合計してみると651.7万円になりました。「普通」に結婚をするために、これだけの費用がかかってしまうとすれば、恋愛はできても結婚までには至らないケースがあるのは理解できます。実際、さきほど紹介した国立社会保障・人口問題研究所の調査で、結婚の意思がある未婚の男女に、1年以内に結婚するとしたら障害はなにかと尋ねたところ、結婚資金がトップで男性43.5%、女性41.5%でした。
改めて指摘するまでもないことなのですが、法的に結婚が認められるためには、婚姻届を役所に提出すればいいだけです。受理されないと結婚できないので、書類に不備がないよう気をつけてください。結婚式、新婚旅行、婚約指輪、結婚指輪のいずれも不要です。