日本で世界最強チームが決まる
浦和レッズ(レッドダイヤモンズ)の出場決定で、FIFAクラブワールドカップ(FCWC 2007年12月、東京、豊田、横浜で開催)への注目がにわかに高まっている。「扱うのは代表チームの大会だけ」の姿勢を1世紀近く貫いてきた国際サッカー連盟(FIFA)が、公式のクラブ世界選手権をスタートしたのは古い話ではない。00年1月にブラジルで開催したのが第1回だった。しかしこの大会は誕生直後に頓挫する。翌年、スペインで開催されるはずだった第2回大会は、スポンサー不足で突然中止になり、以後、消滅してしまったのだ。
しかしFIFAは、この新しい大会を投げ出してしまったわけではなかった。05年になって、1981年から25回にわたって開催されてきたトヨタカップ(ヨーロッパチャンピオン対南米チャンピオン)を受け継ぐ形で、日本で再スタートを切ったのだ。2006年も日本で開催し、ことしも3年連続して日本での開催が決まると、FIFAは日本の要望を入れて「開催国枠」を設けることを決定した。
アジア最強の浦和が世界に挑む
05年以降の基本コンセプトは、「6地域連盟のチャンピオンだけによる世界チャンピオン決定」。しかし日本のクラブが出場できないことで盛り上がりはいまひとつだった。そこで、07年からJリーグチャンピオンにも出場権を与えることを認めたのだ。しかし、07年は、浦和レッズがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制覇、「出場国枠」は日本のチームに使われることなく終わった。「1カ国から2チームは出さない」との原則から、「出場国枠」にはACL準優勝のセパハン(イラン)が入ることになったのだ。
浦和は準々決勝から登場、予備戦として行われるセパハン対オセアニアチャンピオンのワイタケレ(ニュージーランド)の勝者と対戦する。これを突破すれば、準決勝でヨーロッパチャンピオンのACミラン(イタリア)と対戦することになる。
ヨーロッパのトップクラブが来日し、Jリーグのクラブと試合すること、そしてそこで日本のチームが得点したり善戦することは珍しくない。しかしこれまではすべて親善試合だった。FIFAの公式タイトルをかけた試合がどうなるのか、非常に興味深いところだ。
横浜国際総合競技場での試合とはいえ、浦和には「ホーム」の強みがある。しかしシーズンのちょうど折り返し点にあるヨーロッパのチームと違い、浦和はことし2月から過密日程をこなしたシーズンの終盤にある。コンディションが悪いのは明白だが、もちまえの守備力とカウンターアタックで、カカ(ブラジル代表)をはじめ世界的なスターぞろいのミランにひと泡吹かせたいところだ。
過去の大会と大きく違うのは、日本チームの参加だけではない。過去3大会のすべてを制覇してきたブラジルのクラブが、今回は出場権を取れなかったのだ。代わって出場する南米チャンピオンはアルゼンチンのボカ・ジュニアーズ。FWパレルモとパラシオの得点力を武器に、タイトルを南米に持ち帰ろうと燃えている()()。
新ゴール判定装置が登場
チーム以外での大きな興味は、初めて実戦でテストされるドイツ製の「新ゴール判定装置(GLTシステム)」だ。特殊なボールを制作したアディダス社と判定ソフトウエアを作ったカイロス社との共同開発。両社は、05年にボールの位置を正確に計測する装置を作り、FIFAの大会でテストしたが誤作動が多く、今回は根本的に考え方を変え、ボールがゴール内のゴールラインを越えたかどうかだけの判定に特化したシステムを開発した。システムの詳細は明らかにされていないが、もししっかりと機能すれば、レフェリーにとって大きな助けになるはず。興味深いところだ。
08年に行われる第5回大会までは日本での開催が決まっているFCWC。FIFAは、09年以降は広く開催国を募集する予定にしているが、今回の大会を盛り上げ、09年以降もずっと日本で開催できるようにもっていきたいものだ。