ブログを書くとき。製品を宣伝するチラシを作るとき。「パクり」や「コピペ」をしないように気をつけながらも、文章や映像、写真といった他人の「著作物」をどこまで利用して良いのかと迷ったり、誰かの「著作権を侵害」しているかもしれないと心配になったりすることはありませんか?
また、そんなとき、「これは『引用』だから大丈夫なはず」と自分ひとりで勝手に判断していないでしょうか。
「引用」とはどういうことなのか。著作権について詳しい小林康恵弁護士にお話をうかがい、正しい「引用」とは何か、イミダス編集部として考えてみました。
引用を行う際の著作権法上のルール
高度情報通信社会の進展に伴い、誰もがネット上において文章や写真や動画を発信できる時代になりました。仕事で会社のサイトにコラムを書いたり、プライベートではSNSを利用して日常的に文章や画像を発信したりしている人は多いでしょう。
その際に、他人の文章を自分の文章において利用することがあります。例えば、大きな話題になっているニュースについて、ブログでコメントを書くために、そのニュースを報じる記事、書籍に記載されている参考となる情報、ネットに上がっている他人の意見を取り入れる場合などです。
多くの人は「他人の文章をそのままコピペして、それを自分の文章であるかのように書くのはいけない」ということは当然認識していると思います。これは単にマナーの問題ということではありません。他人の文章を無断で利用することは、著作権法という法律に違反する行為となりえます。
著作権法では、文章、写真、動画などの著作物を創作した著作権者は、その著作物の利用を許諾することができ、また、著作権者の許諾を得た者は、許諾された利用方法・条件の範囲内で、その著作物を利用することができると定められています(第63条)。
また、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されています(第2条)。例えば、小説、歌詞、脚本、音楽、建築、映画、美術作品、ダンスの振り付けなども、この定義に当てはまる以上は「著作物」にあたり、著作物の種類は多岐にわたります。他方で、「1989年1月8日から平成が始まりました」というような単なる事実の記述や、「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」といったありふれた表現は、創作性が認められず、著作物には該当しません。
しかし、著作権者の許諾を得ない限り、その文章や映像といった著作物を使用することが絶対にできないというのでは不都合が生じます。そのため、著作権法には、著作物を著作権者の許諾を得ないで利用できる例外的場合についても定めが置かれています。この定めは「権利制限規定」というもので、例えば、写真をコピーして自室に飾るなどの「私的使用のための複製」(第30条)や、授業用のプリントに小説の一部を使うなどの「学校その他の教育機関における複製」(第35条)といった行為については、著作権者の許諾は必要ありません。そして「引用」も、この「権利制限規定」の一つであり、著作権法第32条で定められている行為なのです。
条文を読んだだけでは、実際にどのようにルールを守れば正しい「引用」として認められるのか、わかりにくいのではないかと思います。そこで、「引用」についての一般の方向けの説明を見てみましょう。例えば、文化庁は、そのウェブサイトにおいて、「著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~」という解説資料を公開しています(文化庁HP「著作権に関する教材、資料等」)。このテキストでは、引用の条件として、以下の4点を挙げています。
条件4については、第48条で定められており、第32条の規定によって著作物を複製・利用する場合には、出所を明示しなればならないと記されています。
こうした引用の条件に加えて、「改変」をしてはいけないことにも注意しなければなりません。著作物を改変して利用した場合には正しい引用とは認められません。著作物に勝手に手を加えることは、著作権者の「翻案権」(注1)や著作者の「同一性保持権」(注2)を侵害することになります。著作物を改変せずに、かつ引用の条件を満たすことで、著作権者の許諾を得なくても、その著作物を利用できるのです。
他人の文章を適切に利用するには?
Point1:引用は公表された文章に限られる
著作権法で保護される著作物にはさまざまなものが含まれますが、一般の人々が仕事や暮らしの中で利用する頻度が高いのは文章でしょう。そこで、他人の文章を適切に引用するにはどうすれば良いか、具体的に見ていきましょう。
(注1)
翻案権……著作者の権利の一つで、著作物を編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案などする権利のこと。著作権法第27条に定められている。
(注2)
同一性保持権……著作者の権利の一つで、著作物とその題号(タイトル)の同一性を保持する権利のこと。著作者の意に反してこれらを変更、切除、その他改変することはできない。著作権法第20条に定められている。