新卒職員なみの地方議会議員
地方議会議員は地方公務員等共済組合法により、都道府県・市・町村の三つの共済制度に、議員の身分取得と同時に強制加入となる。報酬額は、最も数が多い町村議会議員の場合、年齢や経験にかかわらず、一般職職員の初任給程度(人口1万~2万人の町村議会議員の平均報酬月額は21万9927円。全国町村議会議長会調べ)である。議員共済制度は強制加入ではあるが、厚生年金等が適用される職にあれば、その制度にも重複して加入することとされている。なお、国会議員の年金制度は、2003年1月に在職50年以上で表彰を受けた国会議員に対する「憲政功労者年金制度」(無拠出・年額500万円)が、06年4月に「国会議員互助年金」(拠出)が、それぞれ廃止されている。
年金はいくら支払われるのか
地方議員は一般職員と異なる任期のある公選職であることから、3期(12年)以上の在職で年金支給の対象となる。退職年金の金額は、平均報酬月額×(35+0.7×(在職年数-12))÷150。例えば、報酬22万円で20年在職すれば月額5万9500円余り。在職中は議員報酬から差し引かれる掛け金と、自治体の負担金を足して100分の32.5に当たる7万1476円を積み立てていることになるので、積立期間と同じ20年間受け取るとしても、差し引き1万2000円弱の赤字となる。
その他、公務傷病による退職等年金と、在職12年未満の議員が退職する場合の退職一時金がある。
このままでは積立金が底をつく
議員報酬の議論同様、まず、その実態が正確に知られていないままで議論が行われているところが、議員年金の最大の問題であろう。議員には知事・市町村長や一般職員に支給される退職金の制度がない。しかし選挙のたびに失業するリスクに対し、議員経験者を受け入れる会社等が極めて乏しいのが実情である。議員年金は、財産や他に収入がある者が議員となる例が多かった1961年、他の年金制度の整備と期を同じくして始められた。85年の年金制度の大改正まで、年金は自分の掛け金を後で利息を付けて受け取る積立方式が原則とされていた。人口増時代にあっては、議員の数も総体で増加し、積立金が増加する状態が続いた。
少子高齢化により国民の年金財政基盤が揺らいでいるが、議員年金は「平成の大合併」で全国でも議員の数が急激に減少したため、一般の年金制度以上に掛け金を納付する組合員数(現役の議員数)を減らし、受給権者を激増させた。なかでも議員数の減少幅の大きい町村では、平成の大合併終了時点で単年度収支が赤字となっており、あと2年で積立金も底をつくことが指摘されている。
議員共済年金制度は、このままでは存続できないのは明らかであるが、どのように統合するかの議論はこれからである。
(注:都道府県、市、町村それぞれの議長会における検討に続き、総務省も「地方議会議員年金制度検討会」で検討を進めていたが、2009年10月6日の会議で、たとえ合併がなくても早晩破綻する制度であったことが明らかになり、制度をどのように終結させるかが一気に現実問題となった。2009.10.22追記)
問題の本質はここにある
議員年金よりもさらに大きく、根源的な問題は、議員や議員経験者の処遇をどうするのかにあろう。合併により議員が減少したことのみならず、無投票選挙が多発するとおり、議員になろうとする者が減少している。有産者、年金生活者や被扶養者等、経済的に、他の収入源がなければ議員活動はできないとなれば、地域の議論をする代表機関と言えるのか。また、そもそも日本国憲法が保障する普通選挙制度として妥当なのか。逆に、誰でも議員を経験できる「回転ドア」が大事と考えれば、議員経験者が退職後に就職できる仕組みがなければならないはずである。現在の議員年金制度は職域の老齢年金制度であるが、普通選挙制度を守るためには議員活動を職業の一つとしてとらえ、次の職までをつなぐ退職金制度とすることも考えられるし、現在、生業ではない故に適用されない雇用保険制度に類似の制度をつくることも必要かもしれない。
町村議会議員を中心に述べたが、都道府県や大都市議会議員ではずっと高い処遇がなされているという反論もあろう。確かにそれらの議員の処遇は、一見、一般職員の部長から課長と同じではあるが、部下は一人もいない。これでは何人も補助職員がいる行政職員と対抗して政策を練り上げ、議案を検討することは不可能である。官僚に対抗しようにも、議員に自前のスタッフがいなければ、行政側に頼ることしかできない。健全な政治を育てるためには、政治に携わる者にきちんとした保障を行うのか、現状を是とするのであれば、議員を支える行政職員以上のスキルを持った無報酬のスタッフが多数必要なのである。