はいさいぐすーよー、ちゅうがなびら。
発表事項に入ります前に辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票条例の署名活動が7月23日に終了し、主催者によると中間集計で必要署名数約2万3千筆を大きく上回る約7万7千筆もの署名が集まったとのことであります。
署名活動に取り組まれた皆様のご努力に心から敬意を表するとともに、政府におきましてもこれほど多く県民が署名を行った重みについてしっかりと向き合ってもらいたいと思います。
東アジアにおきましては南北首脳会談、あるいはまた米朝首脳会談のあとも、今月上旬には米国務長官が訪朝をし、24日にはトランプ大統領が北朝鮮のミサイル施設解体を歓迎するコメントを発するなど朝鮮半島の非核化と緊張緩和に向けた米朝の努力は続けられています。
このような中、20年以上も前に決定された辺野古新基地建設を見直すこともなく強引に押し進めようとする政府の姿勢は、到底容認できるものではありません。私としては平和を求める大きな流れからも取り残されているのではないかと危惧していることを申し上げた上で発表事項に入らせていただきます。
(「翁長雄志沖縄県知事の承認撤回表明記者会見の全文」琉球新報、2018年7月27日)
当初は、県民投票の意義を疑問視する声も多く聞かれ、その実現のために集めていた署名数自体も、直接請求に必要な数(有権者の50分の1)に達するのか不安視されるほど低迷していた。しかし、7月23日の署名締め切り日が近づくにつれて、その数はうなぎ上りに増えていった。
知事会見の時点で7万7000筆を超えており、最終集計数は、7月30日の「県民投票の会」の記者会見において、10万979筆と発表された。
この数字は確かにバカにできない。県民投票の会が目指した11万5000(有権者の10分の1)には及ばなかったが、そして県民投票が「撤回」のための唯一の根拠ではなくなったにしても、あらためて「民意」を示したい、という県民が少なからずいることは証明された形だ。
呉屋守将・金秀グループ会長の本音
最後になったが、紹介しておきたい興味深く、かつ象徴的なインタビューがある。
県民投票が議題にさえ上らないことに不満を表明して「オール沖縄会議」の共同代表を辞任した呉屋守将(ごや・もりまさ)・金秀グループ会長のそれである。
署名締め切りの翌日の7月24日に琉球新報に掲載された発言(一問一答)は、こんな具合だった。
(以下、「分断に終止符、沖縄の未来へ 逃げずに覚悟の選択を 推進派も議論深めて 『辺野古』県民投票の会 呉屋守将顧問に聞く」琉球新報、2018年7月24日)
―県民投票を巡る方針の不一致もあり、オール沖縄会議の共同代表を辞めて市民運動に合流した。
「特に1月の名護市長選の敗北が大きかった。翁長県政の4年間、首長選挙に負け続けてきた。選挙の争点にすることから逃げてきた陣営が、辺野古について暗黙の了解を得たといわんばかりのことを官邸を中心に喧伝(けんでん)する。本当にそうだと思うのであれば、そういう場を設けて県民の総意に耳を傾けるべきだろう」
「やはり県民の意思を直接問う機会をつくることが我々の最大の武器であり、埋め立て承認撤回の有効な手立てになるというのが私の提起だった。知事選や国政選挙を通じて全県民的な民意は表されており、あえてリスクを冒すことはないという声もあった。オール沖縄会議の共同代表を辞めたのは、自分自身があえて『壊死(えし)』した部分であると引き受け、体全体にまひが広がる前に切って捨てた。そうすることで組織に緊張感を持ってもらうこともあった」
―政治の素人が集まった運動をどう見てきたか。
「自分たちの将来のことは自らも関わって議論し考え、一定の結論も見たいという思いだと思う。マンパワーも金も圧倒的に足りない。でもその純粋さが伝わった。県民の中に凝縮された形で広がっている不満感、不安感が、署名が告知されるにつれて多くの賛同につながってきた。本当の意味でウイングの広いオール沖縄になってきた。そうした大きな分岐点に立つ市民運動だと思う」
ここに見て取れるのは、ネット右翼諸君やそれに類する政治家・メディアが喧伝するような「オール沖縄の崩壊」とはまるで反対の、「オール沖縄勢力の再構築」を目指すとも言うべき、呉屋会長の頼もしい気概である。
わたしたちはここにヒントを見出してよいはずだ。
呉屋会長は、「オール沖縄会議」は離脱したが、「オール沖縄」そのもののウイングをもっと広げたいと言っている。
県民投票の会で署名活動に熱心に取り組んだ人々を中心に、若い世代の間にも「基地問題」そのものをタブー視せずに議論していきたい、議論の底辺を広げたい、という気運が高まった。
この流れは、辺野古新基地をめぐる最大の山場と言われる県知事選挙(11月18日投開票の予定が、翁長知事の死去によって9月30日に早まった)に向けて、「民意再構築」のうねりを大きくしていく可能性を秘めている。