公明党、県議会議長、副知事、知事、自民党と協議が進み、3択で実現にこぎ着けた。
愚直に対話と民主主義を求め続けた元山氏や県民投票の会の姿勢が、最後に事態を打開した。民意を政治に反映する回路がなければ作り出す。回路が閉ざされればこじ開ける。米軍支配下の無権利状態に置かれながら、論理と熱量で一つひとつ人権を勝ち取ってきた戦後沖縄の歩みを受け継ぐ実践となった。
沖縄の民意は取るに足らないものなのか
政府や自民党はせめて不戦敗を選ぶことで選挙ムードの過熱を抑え、投票率を下げようと試みた。だが、投票率は52%を超え、反対票は43万票と2018年の知事選で玉城氏が獲得した過去最多得票を上回った。大かたの予想を超える結果は、沖縄の底力と呼ぶにふさわしい。
ところがその投票直後、岩屋毅防衛相は「沖縄には沖縄の民主主義があり、しかし国には国の民主主義がある。それぞれに、民意に対して責任を負っている」と発言した。沖縄の中で反対が多数であろうとも、日本の中では圧倒的少数にすぎない。取るに足らないと宣言したに等しい。
その宣言通り、県民投票からわずか1カ月後の3月25日、政府は辺野古沖の新たな区域で埋め立て土砂の投入を始めた。民意まで埋め殺すかのように。
だが、政府の側にも見通しはない。埋め立て予定地海底の軟弱地盤の存在をはじめ課題が次々明るみに出て、総工費や工期すら示せない状態に陥っている。工事を進めるためには、いずれ設計変更について玉城氏の承認を受けなければならないが、それも不可能に近い。
歴史の法廷で、政府は自ら有罪の証拠を積み上げている。沖縄は人権と民主主義を訴えている。県民投票の結果は、本土の一人ひとりに問うている。あなたは、どちらの側に立ちますか?