「ローカルマネーをグローバルに利用することは、可能です。金融取引は単に『情報の共有』にすぎないからです。『銀行』というのも、実は『情報テクノロジー会社』とほぼ同義語で、現金による取引は、取引全体の2%程度にすぎません。ですから、オープンソースを使って世界とつながり、独占を排した取引システムを構築すれば、どんな町が発行したクレジットカードでも、外国での買い物に使えるようになります。そして、もし問題が起きた場合は、自分の町の役所で問いただせばいいのです。実現にはまだ時間がかかりますが、皆さんのように地域通貨を扱っている市民がその気になれば、第一歩が踏み出せると思います」
確かに金融取引はデジタルデータのやり取りにすぎないのだから、システムさえ確立できれば、基礎単位が「市町村」であっても、国際的なやり取りができるわけだ。最近流行の「ビッグデータ」も、それを入手するシステムを築き上げれば、私たち市民がそれを有効利用できるようになると、ファルチアーニは言う。
「現在は、欧州中央銀行のような機関や大手クレジットカード会社のような大企業が、金融とテクノロジーを独占し、中央集権的に統制しています。それを私たちの手に、ローカルな主体のもとに持ってくることが、公正な取引、つまりフェア・ペイのために重要なのです」
変革のエージェント
この日ファルチアーニの話を聞きにきていた人たちの中には、大会開催地アルカラ・デ・エナーレスの「ポデモス」党員もいた。それは彼が、15年2月からポデモスの腐敗対策部門の活動に協力しているからだ。「(社会変革を目指す複数の)政党への協力は、あくまでもボランティア」だと語り、各地のポデモス支部と連携して、政治家の汚職や企業の脱税問題の告発のために動いている。「政治腐敗が、経済の病いを引き起こす」と断言するファルチアーニは、ポデモス系の市民政治組織が担うバルセロナ市政を、絶賛する。バルセロナは、タックスヘイブンを使って脱税をしている疑いのある企業とは一切の契約をしないという、国内初の条例を出すなど、具体的な腐敗対策に取り組んでいるからだ。
「情報と経済的知識をしっかり持つことは、政治を豊かにします」
ファルチアーニは果たして、泥棒なのか、それとも「変革のエージェント」なのか。どちらにしろ、彼がしていることが市民に利をもたらしていることだけは、確かだ。