ミャンマーと中国は国境線をめぐる領土問題を抱えています。ちょうどクリミア半島問題のように、国境地帯の不安定化は、それを口実にした介入もありうる。そういう意味で中国にとって好都合だからです。また、中国としても何がなんでもミャンマーで軍を支援するというわけではありません。ミャンマー西部のラカイン州沖から中国雲南省へと天然ガスを運ぶパイプラインさえ維持してくれるのであればよいという姿勢であり、ミャンマーの民主化勢力と敵対しているということでもないのです」
まことしやかに「日本がクーデターを批判すると中国のミャンマーに対する影響力が増す」という説が語られる背景には何があるのか。
「メディア業界にたとえるなら、あまりに核心に踏み込みすぎた記事でネタ元(である政治家や官僚等)を怒らしてしまうとまずいので、ちょっとボカして書くというのと同じです。つまり、ミャンマーの軍を怒らせると、彼らとパイプがある日本側の人々(外交関係者等)が困るということなんでしょうね。確かに彼らのもっているパイプは貴重なもので、私自身そのパイプを通じた交渉で釈放されることになりました。こうしたパイプをもっている人々がそろって軍側に物申せば、また状況が変わってくるのではないかと思います。
僕は、ミャンマーの人々の勇気に、刑務所内や地域で助け合う彼らの行いに感動しました。それが取材の原動力となっています。アウンサンスーチーさんのような特別な人だけじゃなく、つい最近まで普通の学生だったような若者たちが声をあげている。そうした彼らの悲痛な思いを、日本の人々にも知ってもらいたいです」
本稿執筆時点で、クーデター発生以来900人が犠牲となっている。これ以上犠牲が大きくなる前に、国際社会が動くべきだろう。ミャンマーの人口は、約5400万。それだけ多くの人々の未来に、日本が影響力をもっているのならば、もっと積極的に関わっていくべきなのだろう。