
統一に対する韓国の潜在的な熱気
西岡 せっかくこれまで統一を目指してやってきたんだから、何とか統一への糸口を模索できないものなんでしょうか……?
石丸 南北分断を解消するためには、「民主化」と「一定程度の経済発展」と「対外開放」が必要な条件でした。韓国はそれを自分たちの力で実現した。闘って民主化を勝ち取り、努力して経済発展をし、外に開かれた社会になっていった。それで、北朝鮮にも、少しずつでも変化を促すように提案をしてきたけど、北朝鮮は、結局それを受け入れませんでした。
なぜ北朝鮮は変われなかったのか――それは、金一族統治が絶対化、国是化されているからです。北朝鮮には憲法、労働党規約も超越する「唯一的指導(領導)体系」という絶対の掟があります。金一族に絶対忠誠を誓い、絶対服従することを全国民、全組織が求められます。それに違反すると政治犯になります。韓国との統一を志向することは、「唯一でないもの」を認めることに繋がります。それが体制を揺るがすと判断した金正恩さんは、「断韓」し「唯一的領導体系」を徹底させることで、世襲による永久執権を目指すと決断したのでしょう。
徐 韓国も分断80年を経て、朝鮮戦争に参加した人やそこで家族を失った人もどんどんいなくなり、今の時期を逃したら、南北関係のややこしい問題を解決しようとする政治家もいなくなってしまうかもしれません。だから、私は、李在明政権の5年というのが、南北関係の今後を左右する重大な時期になると見ています。
2000年に金大中と金正日が会ったとき、95.7%の人々がそれを支持していました。それから18年がたって、朴槿恵(パク・クネ)弾劾を機に、進歩派と保守派が完全に分かれてしまいましたが、それでも、文在寅と金正恩が会ったときには、進歩派も保守派も関係なく、8割以上がこれを支持していたんです。普段は表に見えないけれども、韓国人の心の底には「南北関係が変わってほしい」という熱い思いがあるわけですよ。そこにはまだ、私は希望が残っているのではないかと思います。
石丸 私たちアジアプレスは、北朝鮮内部とのラインがあって、日々やり取りをしていますので、これをしっかり維持して、北朝鮮の中の人たちと連帯したいという気持ちがあります。南北関係は厳しい状況にありますが、その中でも韓国・朝鮮の人たちが分断を乗り越えようと努力することへの共感を、日本社会の中でしっかりと伝えていきたいと思います。