イスラエルとロシアへのダブルスタンダード
問題はそれだけではない。広島市は、イスラエル大使を招待する一方で、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシア大使を「原爆の日」の平和記念式典に招待しなくなった。 国際刑事裁判所は、イスラエルのネタニヤフ首相にも、ロシアのプーチン大統領にも、戦争犯罪人として、国際逮捕状を発行している。それにもかかわらず、イスラエル大使だけ、「原爆の日」式典への参加を許すということは、深刻なダブルスタンダードではないか。それは、世界が平和を願う象徴の地である「ヒロシマ」で、ガザでのジェノサイドが軽視されているということに他ならない。(※なお2025年の広島の平和式典では、各国を招待する方式から国交のあるすべての国に対して式典の開催を通知する方式へと変わったが、ロシア大使は正式な招待ではないとして欠席した。)
このダブルスタンダードは、この間、ウクライナ現地で取材を続けてきた私にとっても、非常に残念なことだ。ロシアの侵攻に対し、ウクライナは国を挙げて抵抗を続けている。ただ、現地で取材をしていて、やはり犠牲は小さくないと感じるのも、また事実だ。ウクライナ東部クラマトルスクの住宅地へのロシア軍による空爆で妻と自宅を失った男性、首都キーウでデモを行っていた行方不明兵士の家族たち、疲弊しきったウクライナ軍の兵士たち――取材に応じた人々は皆、ロシアによる侵略と占領に強く反対しつつも、「1日も早く戦争が終わってほしい」と訴える。だからこそ、国際社会が一丸となって、対ロシア包囲網を強化して、ロシアにウクライナ侵攻を断念させなくてはならない。 だが、それを大いに損なっているのが、イスラエルを支持・支援する欧米諸国(+日本)のダブルスタンダードであることは、この間、国際的な報道やシンクタンクが指摘し続けてきた。

ロシア軍の攻撃で破壊された民家。2025年2月ウクライナ東部、筆者撮影
イスラエル製武器と日本のつながり
しかも、日本による政治的・経済的なガザ攻撃への加担は、象徴的なものにとどまらない。日本企業ファナックが輸出する産業用ロボットがイスラエルの軍事企業エルビット・システムズやBAEシステムズなどの武器製造ラインで使われている可能性があり、国連の人権に関する専門家などが問題視している。イスラエル製品のボイコット運動などの活動をしている市民団体BDS Japan Bulletinによれば、イスラエル防衛省のフェイスブックページでエルビット社の155mm榴弾製造工場でファナックのロボットが稼働している様子がはっきりと映っていることが確認されたという。加えて、イスラエルの他の軍需企業(BSEL社、ローゼンシャイン・プラスト社等)でもファナック社のロボットや電動射出成形機などが使用されていることが、企業のホームページ等から判明したとのことだ。ファナック側は「軍事用途の販売はしていない」と主張するが、軍民両用製品のエンドユーザー確認が不十分だとの批判は根強い。実際、市民によるChange.org署名活動「ファナックはイスラエルの“死の商人”に武器製造ロボットを売るな!」は2024年2月の開始から2025年6月までに3万5000以上の署名を集め、ファナック側に提出している。
防衛省もひどい。東京新聞によれば、パレスチナ自治区ガザでイスラエルの大規模攻撃が始まった2023年10月以降、日本政府がイスラエル製の武器・装備品を計241億円分、購入していたことが同紙の取材で明らかになったという。
さらに今年1月には、自民党安全保障調査会の小野寺五典元防衛相ら自民党や日本維新の会など計15人の国会議員が、イスラエルでネタニヤフ首相を表敬訪問し、日本との関係強化について意見交換したという問題もある。 彼らの訪問は、ガザでのジェノサイドで国際的な批判を浴び、孤立感を強めるイスラエル側を大いに喜ばせたようだ。この訪問をイスラエル政府のウェブサイトや同国外相のSNSなどで大いにアピールしたのである。まさに、小野寺元防衛相らは、日本の国際的な地位を貶めたのだ。
シャハッドさんは、昨年末に行われた議員会館での講演で、日本の国会議員たちに 「同情を本気の行動に変えてください。日本は本物の平和主義国になるべきです。イスラエルに経済制裁を科し、軍事部品の輸出も止めてください」と強く訴えた。ガザでの虐殺に対し、国際社会が十分な対応を取らなかったことで、イスラエルの暴走を助長させ、米国と共にイランへの攻撃にまで踏み切らせた。その弊害は、原油の価格高騰・供給不足というかたちで既に私たちの生活を直撃している。今こそ、シャハッドさんの訴えを我々は真剣に受け止めるべきなのだろう。

原爆ドーム前で反戦アピールをするシャハッドさんと地元の平和運動家。筆者撮影