最後に、インターフェースの部分であるが、国民の支払った保険料の情報と給付予測、年金運営にかかる費用を国民に毎年通知する、社会保障カードの導入を進めるべきであると考える。
2009年度改革に向けて
次回の2009年度年金制度改革に向けて、現在、「形」にかかわる改革が進められている。それが、非正規労働者への厚生年金への適用拡大、共済年金と厚生年金の統合から構成される年金の一元化である。空洞化を解消する特効薬は、厚生年金のパート・アルバイトに対する適用拡大であり、同様の対応は諸外国でも行われている。この対策を行わないで、社会保険庁を民営化しても、空洞化は解消されないであろう。民営化は目的ではなく、あくまでも手段であり、目的は空洞化の解消や正確な納付記録の管理である。社会保険庁やその後継組織に求められるのは、厳格な年金の適用、公正な徴収・免除、正確な記録管理と給付、加入者への情報通知、効率的な運営といった基本的なことであり、そこを改善できるかどうかが重要である。
積立金が不十分になっている賦課方式を今後も維持し、将来も年金給付を行うためには、累計で1000兆円単位の費用が必要である。今後、高齢化のなかでその費用をどのように確保するかが、今後、私たち国民が考えていかねばならない問題である。そこでは、高齢世代も現役世代もみんな得をするという改革はあり得ない。どのように高齢化のコストをすべての世代で公平に分かち合うかが課題なのである。冷静な議論が必要である。