しかし、有名な女優が何人も所属しているようなAVプロダクションによる出演強要被害の相談もいくつもある。大手の制作会社も例外ではない。虚偽の説明や脅しすかしで不本意に出演させられているのを知っていたり、感づいていながら、そこは自分たちの利益や契約を優先させてビジネスライクに撮影を行うようなことが実際にある。
さらに最近では、インターネット配信用のAVコンテンツを制作する業者による被害も、多数報告されている。多い事例は、イメージモデルやヌードモデルの被写体として応募したが、ホテルなどに連れて行かれて性行為を強要され、その様子がネットのコンテンツとして有料配信されるのだ。
ライトハウスの相談窓口に寄せられる相談で一番多いのは、今、拡散されている動画などを「止めたい」「削除したい」という主訴だ。しかし、一度ネットに出てしまった動画や画像を削除することは非常に難しい。法の目をかいくぐって海外にサーバーを置き、日本に向けてコンテンツを不法配信する業者もいる。交渉の末に削除されたとしても、いつまたどのような形で出現するかわからない場合も多々ある。業者を訴えようにも、AV出演の強要被害が強要罪や強制性交等罪として、現行法の刑法等にも抵触する場合はないに等しい。
私たちの支援は、相談支援スタッフ、ボランティアを含めた10人ほどのチームで行われている。メールや電話で相談が来たあと、まずは本人に会い、安全に話せる場所で経緯を聞く。相談者が解決したいことを聞き、こちらでできることを提案する。いつ、何歳のときに被害に遭ったのか、騙しや脅しがあったなら、どのようなものだったのか。やりとりの記録は残っているかなど、相談にいたるまでの経緯を把握し、解決に向けたベストな方法を一緒に考えるのだ。
最近ではこうした問題が明るみに出て、政府も認識し始めた。これまで反応が鈍かった警察も事件化を視野に入れ、積極的に話を聞いてくれることも増えた。弁護士を介して制作会社などと交渉することも多い。法テラスという返済がしやすい制度を使い、相談者はライトハウスと弁護士とともに動画削除・販売停止に動くのだ。被害を思い出したり、動画を確認したり、相談者の精神的な負担は大きい。相談者をきめ細かく、精神的にもサポートしないと、途中で心折れてしまう場合も多い。地方からの相談も多く、このような相談に対応するための助成金を獲得し、相談支援スタッフが地方都市まで行くこともある。
私たちの相談窓口の運営自体は、個人の寄付金や法人からの助成金等によってなんとか回している。しかし17年に入ってからも、相談は増える一方である。
17年3月には、ついに政府が関係省庁幹部による対策会議を立ち上げ、翌4月をAV出演強要・JKビジネスなどの「被害防止月間」として、東京・渋谷での啓発イベントが開催された。これに続き、全国でも警察などが主体となり、啓発キャンペーンが実施されている。
5月19日の関係府省対策会議（「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する関係府省対策会議」）では、4月の被害防止月間の取り組み状況と今後の対策についての発表があった。特に対策の要となるのは、全国の都道府県警察にAV出演強要問題の専門官が配置されることだ。専門の窓口ができることで、今後は被害者はもちろん、私たち支援団体も警察への相談がずっとしやすくなることが期待できる。取り締まりについても、刑法や労働法など各種法令を厳格に適用して推進し、勧誘行為の摘発なども強化されるという。
AV出演強要問題の深刻さとして実感させられたことは、「動画を削除する」「販売を停止する」といった解決のためには、出演した被害者自身が時間や労力、弁護士費用をはじめとする金銭的な負担も負わなければいけないという不条理な現実だ。そして言うまでもなく、公開・発売された被害動画は、時間が経つほど拡散されていく。
今後、AV出演強要の手口は変化していくだろう。そのため、AV出演に関わる問題を予防から取り締まり、さらには被害後の支援までを包括した政策が必要だ。性行為を伴うAV出演を断りたい、販売を停止したい、動画を削除したいと思った際のペナルティーや違約金などを厳しく禁じる制度、出演後の制作物が編集加工され、半永久的に頒布されることがないような仕組み、AV出演者の肖像権が守られ、違法な販売や配信の取り締まりや罰則規定なども併せて作ってほしい。まだ取り組みは始まったばかりである。
◆無料相談窓口
人身取引被害者サポートセンター ライトハウス
ホームページ：http://lhj.jp
電話：0120-879-871（月～金曜の10～19時）
メール：soudan@lhj.jp
LINE：LH214【表示名「ライトハウス」】
※http://line.me/ti/p/VkQXNT_gFeで検索
さらに最近では、インターネット配信用のAVコンテンツを制作する業者による被害も、多数報告されている。多い事例は、イメージモデルやヌードモデルの被写体として応募したが、ホテルなどに連れて行かれて性行為を強要され、その様子がネットのコンテンツとして有料配信されるのだ。
ライトハウスの相談窓口に寄せられる相談で一番多いのは、今、拡散されている動画などを「止めたい」「削除したい」という主訴だ。しかし、一度ネットに出てしまった動画や画像を削除することは非常に難しい。法の目をかいくぐって海外にサーバーを置き、日本に向けてコンテンツを不法配信する業者もいる。交渉の末に削除されたとしても、いつまたどのような形で出現するかわからない場合も多々ある。業者を訴えようにも、AV出演の強要被害が強要罪や強制性交等罪として、現行法の刑法等にも抵触する場合はないに等しい。
私たちの支援は、相談支援スタッフ、ボランティアを含めた10人ほどのチームで行われている。メールや電話で相談が来たあと、まずは本人に会い、安全に話せる場所で経緯を聞く。相談者が解決したいことを聞き、こちらでできることを提案する。いつ、何歳のときに被害に遭ったのか、騙しや脅しがあったなら、どのようなものだったのか。やりとりの記録は残っているかなど、相談にいたるまでの経緯を把握し、解決に向けたベストな方法を一緒に考えるのだ。
最近ではこうした問題が明るみに出て、政府も認識し始めた。これまで反応が鈍かった警察も事件化を視野に入れ、積極的に話を聞いてくれることも増えた。弁護士を介して制作会社などと交渉することも多い。法テラスという返済がしやすい制度を使い、相談者はライトハウスと弁護士とともに動画削除・販売停止に動くのだ。被害を思い出したり、動画を確認したり、相談者の精神的な負担は大きい。相談者をきめ細かく、精神的にもサポートしないと、途中で心折れてしまう場合も多い。地方からの相談も多く、このような相談に対応するための助成金を獲得し、相談支援スタッフが地方都市まで行くこともある。
私たちの相談窓口の運営自体は、個人の寄付金や法人からの助成金等によってなんとか回している。しかし17年に入ってからも、相談は増える一方である。
政府の対策は期待できるか？
ここ数カ月の間にAV出演強要問題の解決に向けた対策が、急速に始まりつつある。ライトハウスとしても、これまで渋谷区、東京都、さらには国会議員や内閣府等の中央省庁に現状を報告してきた。そうした中で16年に大手AVプロダクションが労働者派遣法違反容疑で摘発され、元社長らが逮捕される事件が注目された。そして16年12月、公明党内に「AV出演強要問題対策プロジェクトチーム」が立ち上がった。17年3月には、ついに政府が関係省庁幹部による対策会議を立ち上げ、翌4月をAV出演強要・JKビジネスなどの「被害防止月間」として、東京・渋谷での啓発イベントが開催された。これに続き、全国でも警察などが主体となり、啓発キャンペーンが実施されている。
5月19日の関係府省対策会議（「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する関係府省対策会議」）では、4月の被害防止月間の取り組み状況と今後の対策についての発表があった。特に対策の要となるのは、全国の都道府県警察にAV出演強要問題の専門官が配置されることだ。専門の窓口ができることで、今後は被害者はもちろん、私たち支援団体も警察への相談がずっとしやすくなることが期待できる。取り締まりについても、刑法や労働法など各種法令を厳格に適用して推進し、勧誘行為の摘発なども強化されるという。
AV出演強要問題の深刻さとして実感させられたことは、「動画を削除する」「販売を停止する」といった解決のためには、出演した被害者自身が時間や労力、弁護士費用をはじめとする金銭的な負担も負わなければいけないという不条理な現実だ。そして言うまでもなく、公開・発売された被害動画は、時間が経つほど拡散されていく。
今後、AV出演強要の手口は変化していくだろう。そのため、AV出演に関わる問題を予防から取り締まり、さらには被害後の支援までを包括した政策が必要だ。性行為を伴うAV出演を断りたい、販売を停止したい、動画を削除したいと思った際のペナルティーや違約金などを厳しく禁じる制度、出演後の制作物が編集加工され、半永久的に頒布されることがないような仕組み、AV出演者の肖像権が守られ、違法な販売や配信の取り締まりや罰則規定なども併せて作ってほしい。まだ取り組みは始まったばかりである。
◆無料相談窓口
人身取引被害者サポートセンター ライトハウス
ホームページ：http://lhj.jp
電話：0120-879-871（月～金曜の10～19時）
メール：soudan@lhj.jp
LINE：LH214【表示名「ライトハウス」】
※http://line.me/ti/p/VkQXNT_gFeで検索
