中高生の少女らが、コミュニティーサイトなどで知り合った相手に裸身や下着姿などの画像を送ってしまう、「自画撮り」の被害が急増している。児童ポルノ犯罪にも直結するため、2018年2月には東京都が画像送信の要求を禁じた改正青少年健全育成条例を施行。兵庫県も4月に同様の条例を施行する見通しだ。いまや自治体が罰則を設けるほどの社会問題となった自画撮りだが、その被害実態や身の守り方について、人身取引被害などに詳しいNPO法人人身取引被害者サポートセンター ライトハウスの藤原志帆子代表に聞いた。
とてもこまめで、やりとりも上手
児童ポルノ(児童が関わる性的な行為や姿態、裸体などを描写した写真や電子データ)の中で言う「自画撮り」とは、自らの性的な姿を動画や写真に撮り、メールやSNSで特定の相手に送ってやりとりをする行為です。海外では、性的な動画や会話をやりとりする「セクスティング」(sexting)が、同様の意味を持つ用語として使われているようです。
毎年、被害数が増え続けている児童ポルノのうち、その半数近くが子どもたち自身によって作られている=自撮りであることが、今、大変問題視されています。
子どもたちは、加害者となる相手にだまされたり言いくるめられたりして、つい求められるままに画像を送ってしまいます。中学生や高校生ぐらいの子たちからの「裸の画像を送ってしまった」「自画撮りをネタに脅された」という声は、私たちライトハウスの相談窓口にも寄せられています。今回は、そうした相談の中から分かったことをご紹介しましょう。
まず「自画撮りを要求してくる」ような人物は、ツイッターやLINEを使って10代の子どもたちとどのようなやりとりをしているのでしょうか?
私はよく、実際に会うととても若く幼くも見える中学生の女の子が、こんなにも性的な言葉や話に付いていけるんだ、と感心してしまうことがあります。もちろん子どもたちが性に興味を持つのは、当たり前のことです(AVや友人などからもたらされる、怪しい性情報の影響が大きいなとは感じますが……)。しかしそれと同時に、彼女たちから聞かされる自画撮り要求者たちの巧みな言葉掛けにも毎度驚かされます。
「俺は女の子を喜ばせるエッチができる。○○ちゃんにも経験させてあげたい」
「僕は胸の小さい子が好き。僕が見たいだけだから撮って見せてよ」
「大学生だけど起業しててお金あります(笑)。エロい動画・画像くれたらお礼します」
やりとりの最後には、こんな言葉を並べて被害者に会おうとしたり、画像を送ってもらうまで執念深くコツコツ連絡を入れたりしている加害者が実際にいました。恐らく嘘だらけの内容を伝えているのでしょうが、とてもこまめで、やりとりも上手なのです。中には自殺をほのめかす言葉などで同情を誘ったり、会話の中で得た相手の弱みやプライベートな情報を使って脅し取るように要求したりする手口もありました。
どう言ったら、何を約束したら、裸の写真を送ってくれるかを常に考えて、失敗も成功もたくさん積んでいるように感じます。きっとこの道のプロなのでしょう。
ライトハウスに入る相談では、自画撮りを要求してくる加害者の年齢層は、大学生や中年男性から10代の若い子まで幅広いことが分かります。被害者とほぼ同年代の中高生も意外と多く、そんな傾向にも危機感を覚えました。更に先日意見交換をした警察の担当者によると、自画撮りを要求する加害者は単に金もうけが目的で児童ポルノを集める業者が多いのかと思いきや、そうではないようです。自画撮り画像を趣味として楽しみ、そのついでに流出させて金を得るという、二重の目的を持った人物が多いということでした。
自画撮りはなぜ「流出」するの?
中学生のAさんはツイッターで知り合い仲良くなった人に、ある時、裸の写真や動画を送るように頼まれて、つい軽い気持ちで撮影して送りました。更に後日、普段着ている服や靴下も欲しいと求められたので、ネットアプリを使って譲渡したところ、その後にAさんの名前でツイッターに「なりすましアカウント」が作られ、そこで彼女が送った画像や私物が売られていることを知りました。
また16歳のBさんは、彼氏に携帯電話のカメラで性的な写真を撮られました。付き合っている相手だったので許してしまったのですが、別れて数年後、その時に撮った写真が元カレの知人から送られてきました。「バラまかれたくなければ会いに来い」と脅され、どうにかして解決しなければと思って会いに行くと、その男にホテルへ連れ込まれて暴行され、さらに写真を撮られてしまったそうです。彼女は、その写真もどこかで拡散されているのではないかと、毎日のようにネット検索を続けています。
以上はライトハウスが得た事例ですが、ここでも自画撮りの加害者は、児童ポルノの収集や所持だけではなく、それを拡散するという二次加害についてもちゅうちょしていません。
冒頭でもお話ししたように、18歳未満の子どもに自画撮りさせた裸や下着姿の画像は児童ポルノです。2014年に改正された「児童買春・児童ポルノ禁止法」では作るのも、作らせるのも、送らせるのも、送られた物を保存しておくのも禁止されています。違反者には懲役刑や罰金刑が科せられます。しかし現状は、先の事例のように画像が流出した後でしか取り締まることができず、自画撮り被害は増え続けているのです。そして一度流出してしまうと、被害に遭った子のそれからの人生に大きな影響を及ぼします。
では被害を防ぐには何が必要なのでしょうか?
13〜19歳のモバイル端末の個人保有率が87.1%(総務省「通信利用動向調査」2016年のデータ)となった今、どんな子も自画撮りによる被害に遭う可能性があります。スマホ利用で子どもたちに追い付けない大人は、「危ないから使わせない」という考えに至りがちですが、それでは解決にならないと思います。
スマホや携帯電話は、子どもにとっては他人とつながれる一番身近なツールですし、子どもは人と繋がることから成長するのだと思います。スマホがそのための大切な道具となっている今、「使わせない」という考えは非現実的であり、子どもも納得する使い方のルールを決めなければいけないと思います。そのために身近にいる子どもたちに、どんなアプリやSNSサイトなどを利用していて、どんな使い方をしているか、などを教えてもらうとよいでしょう。その上で「危ない使い方かも……」と思ったら、それは子どもたちとともに考え、答えを出してみてほしいです。