被害防止には意識の変化が必要
17年夏、ネット上で少し「炎上」した啓発ポスターがありました。JKビジネスや児童ポルノ犯罪を予防するため内閣府が作成したものですが、「はしゃぎ過ぎダメ」という子どもたちに投げ掛けるようなキャッチコピーが掲げられていました。子どもの性を買う側や社会への訴えではなく、被害者である子どもに対し「性を売る方が悪い」とも取れるメッセージになっていたことから厳しい意見も見掛けました。
しかし数カ月後、警察庁が出した啓発ポスターは「絶対に許すな子供への性犯罪」というコピーで、ビジュアルもスーツ姿の成人男性がスマホに映る少女をクリックしているという秀逸なデザインでした。
更に最近では「あなたは悪くない!」と題したリーフレットも作っています。こちらは中面に「このリーフレットは、性被害にあって一人で悩んでいる子供に対し、警察をはじめ様々な機関等で受けることができる支援の内容や、相談できる窓口を知ってもらい、少しでも安心して生活できるようになってもらいたいという願いから作成したものです。あなたは一人ではありません。まずはあなたの話を聞かせてください。何ができるか一緒に考えましょう」とあり、「行政や警察がこういう姿勢でいてくれたら、子どもたちも相談しやすくなるよね」と、私たちの間では好評でした。
https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/shien_soudan.pdf(外部サイトに接続します)
援助交際やJKビジネス、そして今回のような自画撮りの社会問題化に対し、これまで多くのメディアや社会学者は「なぜ少女たちは性を売るのか? なぜ裸の写真を送ってしまうのか?」という視点からでしか論じてこなかったのではないでしょうか。まず私たちがなすべきは、「子どもは被害者である、正すのではなく守らなければならない」と意識を変化させることです。そうして、もし皆さんの周りに被害に遭っている子がいたとしたら、ぜひしてあげてほしいことがあります。
●一人で頑張ってきたこと、信頼して話してくれたことへの感謝を伝える
●被害の詳細よりも前に、その子が心配していて不安に感じていることを聞く
●その子がどのような状況になるのを望んでいるかを聞く
ここからは少し難しいかもしれませんが、被害の有無や程度を見極めた上で、一緒にできることを考えてあげてください。当人が安心してくれて、警察や親なども入れて解決することに同意してくれたら成功ですが、そう簡単にはいかないかもしれません。実際に罪を問われるのは違法な画像を送らせ、所持している側だけですが、被害に遭った子は罪悪感や動揺から、「周りを失望させてしまわないか」「家族をバラバラにしてしまわないか」「友人に知られないか」という不安に駆られていることが多いのです。
無防備な子どもを付け狙う社会
昨今は自画撮り以外にも、性暴力の中で動画や写真を撮られるなどの被害が多くなってきています。それらは電子データになった段階で、世界中に拡散されていきます。被害者は誰にも見られたくない姿が、名前や学校名とともに広がっていくのです。一方で加害者にとっては、今のネット規制や法律ではこうした犯罪はローリスク・ハイリターンであり、「手軽でおいしい」という認識からどんどん助長されていきます。
日本では自画撮り要求、AVへの出演強要、援助交際・JKビジネスなど無防備な子どもを狙った性的搾取が急増しており、そうした犯罪に対する取り組みの甘さについても、海外ではしばしば報道され、国際機関などからも指摘されてきました。せめて2年後の東京オリンピックまでには、少なからず国際基準に近付けなければいけません。私はローリスク・ハイリターンな性的搾取が許される国など、決してあってはいけないと考えます。
そういう面でも、今回の自画撮り被害に照準を合わせた自治体の条例改正、警察庁による取り組みなどは有意義だと思います。しかしそれ以上に、私たち一人ひとりが無関心であることをやめ、今を生きる子どもたちが性暴力に遭わない社会を作るよう努力することが大切です。