特に大きな労働組合には、その組織力や資金力を使って、この問題に本気で取り組んでほしいと考えています。
今後、非熟練の外国人労働者が働くようになるのは、労働組合のない小さな会社がほとんどだと思います。つまり、解雇などの問題があっても駆け込む場所がない。だから大きな労働組合は、自分たちの会社の外国人労働者はもちろんですが、それだけではなく二次下請け、三次下請けの会社にまで目を向けて支援をしてほしい。そして、いずれは外国人労働者の組織化にも取り組んでほしいと思います。
たとえば、機械・金属産業の企業が集まる「ものづくり産業労働組合(JAM)」では、17年前からミャンマー人労働者の小さな労組をずっと支援してきています。2018年、ある大手衣料品チェーンが取引先に対して「外国人実習生への人権侵害がないように」と申し入れたことが報道されましたが、あれもミャンマー人労働組合からの訴えを受けたJAMの調査で、下請け企業での実習生に対する賃金未払いが発覚したことがきっかけです。
外国人労働者が入ってくることで、日本人の雇用が奪われるのではないか、日本人の賃金が下がるのではないかという懸念の声もあります。もちろん、それは十分に考えられますから、受け入れ人数の規制などはある程度必要でしょう。ただ、そこには、外国人労働者は日本人労働者の敵ではなく、労働者として共に闘う仲間なんだという視点が欠けていると思います。
先ほどの衣料品チェーンのケースがそうだったように、彼ら、彼女らが声を上げてくれることで、さまざまな労働問題が可視化されてくる。それは、日本人も含めた労働者全体の権利の底上げにも間違いなくつながっていくはずです。労働組合には、外国人労働者という「敵」が来るのではなく、力強い仲間が来るんだという視点を、ぜひ持ってほしいと思います。
労働現場だけの話ではなく、今私たちが考えるべきは「外国人労働者を受け入れるべきかどうか」ではなく、すでに日本に大勢いる外国人も含めた日本社会を、どう住みやすく、よくしていくかではないでしょうか。多文化共生のできない、外国人にとって住みにくい社会は、日本人にとっても絶対に住みよい社会ではないと思うのです。
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