この本はあくまでも、7つの家族の物語=生きたドラマです。8050問題を網羅した解説本でも、解決のノウハウを示した専門書でもありません。それぞれの人生をまずそのまま見ていただくことが、ノンフィクションとしては重要なのではないかと思っています。ひきこもりになった原因、家族のかたち、どんな葛藤を抱いているのか、これからどんな人生を歩もうとしているのか……それぞれのひきこもり当事者やその家族たちは、わずかな共通点はあっても、みんなまったく違いました。「8050問題」という言葉で一括りにせず、自分の家族によってもたらされる困難と、一人一人がどう向き合ってきたかを知っていただければ嬉しいです。
また、本書は「再生の物語」でもあります。私はとりわけ「50世代」に向けてのメッセージを込めました。もう若くないからといってあきらめないで、いまここからでも再生を始めてほしい。自分の人生をどう生きたかったのかを考え、自分の本当の人生を生きてほしい。この本がその助けになれればいいと心から願っています。
◆書籍刊行記念の集中連載、黒川祥子『「8050問題」のいま』(全5回)はこちら!