「生活保護を受けたいが、10人部屋は(感染が)おっかなくて入れない」と言われる。各区の福祉事務所がホームレスの人たちに紹介する民間の宿泊施設に、相部屋のところが多く、居住環境が悪いことは、以前から当事者の間でも有名だったが、コロナ問題により問題がさらに深刻化していることを実感。
・「つくろい」で運営している個室シェルターを増やしていくことを決め、物件を探し始める。
3月24日(火)
「つくろい」の活動を前々から応援してくれている女性から、自分の所有しているアパートの一室が開いたので、使いませんかという話をいただく。
コロナ危機により新たに住まいを失う人が増えかねない状況にあるので、大変ありがたいと伝え、翌日の夕方に、内見をすることに。
3月25日(水)
・朝、協力してくれる不動産屋さんの紹介で、シェルター用の物件を内見。申し込みをする。
・昼頃、住まいの貧困ネットの坂庭さんと電話で話す。SNSを見てもコロナ危機の影響で家賃が払えないという声が広がっており、早い人では今月末から払えなくなる人が出そうな状況。家賃を滞納した人が追い出されて、ホームレス化してしまう事態を避けるために、大家さんや不動産業者に対する「緊急アピール」を出そうと提案して、合意を得る。
・欧米では、家賃の不払いを宣言する「レントストライキ」が広がっているが、日本では民間賃貸住宅の入居者に居住権があるということすら知られていないので、文面を工夫することに。急いで文案を作り、住まいの貧困ネットのコアメンバーにメールで送り、意見を求める。
・夕方、支援者の女性から話のあったアパートの部屋を内見。借りたいと伝えたところ、「私がオーナーだから」と即決してくれる。すぐに不動産屋に行き、契約書を交わす。
・夜、個室シェルター増設のための寄付を募ることを思いつき、Twitterに以下の文を投稿。
「コロナ危機による貧困拡大を踏まえ、つくろい東京ファンドで借り上げている個室(現在25室)をさらに増やすことを決意。本日、都内数ヶ所の空き室を内見し、うち1室は大家さんのご厚意でその場で契約しました。採算度外視で緊急シェルターを増やすので、ぜひ応援をお願いします。https://tsukuroi.tokyo/donation/ 」
投稿をして、短時間で寄付がどんどん集まっていく。私たちの社会はまだ捨てたものではない。
3月28日(土)
・住まいの貧困ネットでまとめた「緊急アピール」を発表。Twitter等で拡散させる。考えた末、「#家賃の取立ては政府へ」というハッシュタグを付ける。
・アピールは、「警告」と「お願い」が同居する奇妙な文になった。前半は、家賃を滞納した人を法的手続きに則らずに追い出すのは違法です、という警告。過去に追い出された人が損害賠償を請求した裁判で、ほぼ全て被害者側が勝っていることをリマインドした。後半は、家賃を滞納した人を追い出しても空き家になるだけで誰も得しないから、入居者への公的支援を拡充させることで、問題を社会的に解決しませんか、という「お願い」。そのために私たちと一緒になって、政府に制度の改善を要求してください、と訴えた。
・改善のポイントとして、政府が失業者に家賃を補助してくれる住居確保給付金制度や生活保護制度の使い勝手を良くすることを挙げている。大家さんの団体や不動産業界団体には、政治力を持っている団体もある。その政治力を公的支援の拡充に使ってほしい、そのほうがウィンウィンですよ、という呼びかけである。この「緊急アピール」の発表はメディアで取り上げてくれた。
・不動産関係の各業界団体に送付したが、後で返信のメールをくれたところもあった。少しは効果があったようだ。
3月29日(日)
・大家さん側に釘を刺したので、今度は入居者側に自分の居住権と生存権を知ってもらうためのブログ記事(住宅維持編1.生活再建編2)を書く。無理やり、追い出されなくても、家賃を滞納した時点であきらめてしまい、自分から部屋を出てしまう人が多いので、それを防ぐための情報発信である。幸い、これらの記事もSNSで広く拡散され、たくさんの人に読んでもらうことができた。
Twitterを見ると、ライブハウスの営業停止で苦境に陥っているミュージシャンの間でも、記事はまわっているようだ。ぜひ自分の権利を知って、行使してほしい。
・以前、都内の路上生活者の実数を把握する深夜の調査を行う「東京ストリートカウント」の活動を通して知り合った北畠拓也さんよりメール。
北畠さんは現在、まちづくりのための事務所を経営しているが、コロナ危機により住まいを失う人が急増することを懸念し、都内のホームレス支援団体と一緒に東京都に緊急要望書を提出したいという。
「つくろい」として賛同すること、他の支援団体にも声をかけることを約束し、都庁申し入れの日程を調整してもらうことにする。
3月30日(月)
・欧州から日本に旅行に来ていた若者からのSOS。帰りの航空機が飛ばなくなったため、帰国できず、滞在が長引いている間に所持金が尽きてしまった。このままでは路上生活になるというメールが入ったため、「つくろい」の事務所で面談する。日本のアニメが好きで、仕事でお金を貯め、憧れの東京にやって来たとのこと。母国からのチャーター便が来るまでの数日間、「東京アンブレラ基金」から緊急の宿泊費を渡す。
・「東京アンブレラ基金」は、「今夜、行き場のない人」に緊急宿泊のための資金を支援するため、都内のさまざまな団体と一緒につくった共同の基金で、「つくろい」が事務局を務めている。昨年のクラウドファンディングでは、約600万円の寄付金が集まり、スタートできた。
当初はもちろん、日本に来ている観光客に利用してもらうことになるとは想定していなかった。緊急時だから、誰が路上生活になってもおかしくない状況にあることを再確認する。
・家賃滞納に関する私のブログ記事を読んだ方から、相談のメールが届く。自営業の売り上げが減り、賃貸住宅の家賃を滞納。家賃保証会社から出ていけと言われているという。住宅問題に詳しい弁護士につなぎ、相談をしてもらうことに。
後日、分割払いで解決できたというメールが届く。
4月1日(水)
・つくろい東京ファンドの広報担当の佐々木大志郎と相談をして、個室シェルター増設の寄付キャンペーンを正式に始めることにする。キャンペーンを始めて、Twitterで拡散された途端、多くの個人からの寄付が届く。
・以前から私たちの活動を応援してくれている批評家の若松英輔さんもTwitterで呼びかけてくれている。若松さんのツイート効果は絶大で、ありがたい限り。
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