しかし社会から多様性や自由が失われてしまうと、そうした運動そのものが弱体化してしまう。コロナ禍という前代未聞の危機に立ち向かうためには、画期的なイノベーションや工夫、アイデアが何よりも求められるというのに、である。
今回のコロナ禍は、私たちが大事にしてきた自由や権利や多様性といった価値や、デモクラシーという政治体制に、かつてないほどのプレッシャーを与えている。私たちはそのプレッシャーに白旗を掲げ、自由や権利や多様性を手放し、全体主義の誘惑に負けてはならないと思う。全体主義化が進めばイノベーションが停滞するだけでなく、コロナウイルスに関する正確な情報さえも自由に流通しなくなり、私たちはウイルスに対抗する術を失ってしまう。
ここは正念場だ。
繰り返しになるが、私たちはむしろ、このコロナ禍を自由や権利や多様性といった価値を鍛えていく機会とすべきではないだろうか。僕はそれが、コロナ禍を生き延びていくために、そしてコロナが去った後にデモクラシーを継続していくために、どうしても必要なことだと思っている。