『安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト』(移住に関する国際的な文書で、2018年に国連総会で支持決議が採択され、日本も賛成)では、入管による収容は『最後の手段』であるとされ、仮に収容する場合でも、EUなどでは収容の期限を6カ月、やむを得ない場合でもあと12カ月と定めています。一定の期間を超えて収容する場合に、その要否を問う仕組みを創設することや、行政訴訟に被収容者がアクセスしやすいようにすることが必要です。
さらに提言には、『新たな収容代替措置を制度化することが可能である場合にはこれを活用すること』との文言が入りました。この収容代替措置とは、送還の対象となった外国人でも第三者(国、その他の支援者)の補助により、逃亡防止等を図りつつ、収容施設外での生活を認めるというものです」
外国人の強制送還の手続きを進めるために、個別の事情を鑑みず、全員を収容する「全件収容主義」という入管の方針自体が非人道的であるとして、難民を支援する弁護士たち、NGOや市民団体から批判されてきた。
劣悪な収容環境も改善すべきだろう。とりわけ被収容者が医療を十分に受けられないことは、それ自体が人権侵害だ。また、入管職員による被収容者への侮蔑的で乱暴な対応もたびたび問題になっている。
「提言には『常勤医師の確保のための具体的措置』という文言、『被収容者の処遇業務における心身の負担から離職する入管職員が少なくない現状を再検討』という文言も入りました。刑務所のような一人になる時間もないようなプライバシーの欠如、家族と触れ合うことすらできないといった収容のあり方。これらを改めなければ、医療の必要性は増大する一方です。環境も改善されるべきだと思います。長期収容施設では薬の服用をしている被収容者が9割を超えるという状況はやはりおかしいでしょう。『秩序を守るため』であっても懲罰に頼るのではなく、被収容者のストレスの原因を把握し、懲罰以外の適切な手段となるよう努めるべきでしょう。
今の日本の難民認定は国際水準からかけ離れていることは確かです。国際情勢の動向は専門分野ではない入管から難民認定審査を切り離すことも必要でしょう。入管法も、国際結婚や両親や祖父母に外国籍の親族がいる人が増えていて、国籍によってのみ区分する社会構造ではなくなってきており、また外国人も多く受け入れようとしているなど、日本社会が変わっていることを反映し、日本社会や国際社会に合致するようなもの、生活している『人』に着目した入管行政へと改正されなくてはいけません」
ノンルフールマン原則
迫害を受ける恐れのある人を、生命または自由が危機にさらされる恐れのある国に送還してはならないという国際法上の原則。