国連「子どもの権利条約(Convention on the Rights of the Child。日本政府訳では「児童の権利条約」)」は、日本も批准しており、その第12条(意見表明権)には、「締約国は、自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する」と書かれている。子どもたちが過ごす学校という「社会」において、社会の矛盾や問題を提起し、状況をよりよいものへと変えていく市民を育てるために、子どもたちが自発的に発言し、学校側と対話を重ねながら、理不尽な校則や指導を改善していくことができれば大きな意義があるはずだ。
だが、日本で「子どもの権利条約」第12条が守られているとは言い難い。国立青少年教育振興機構が今年6月に発表した、日米中韓4カ国の高校生に対して実施した意識調査によると、「学校の校則は生徒の意見を反映しているか」という問いに「反映している」と答えた日本の高校生はわずか16.6%と非常に低い。アンケート結果にある、自分たちの意見を表明しても「何も変わらない」「社会からの理解を得られない」、あるいは意見を表明する「機会がない」という彼らの声からはあきらめが漂う。
状況を改善していくためには何が求められるのか。子どもの権利について長年活動を続けてきた喜多明人・早稲田大学名誉教授にうかがった。
※「子どもの権利条約」の条文等は、国際教育法研究会訳『解説教育六法2015年版』(三省堂)より引用。「子どもの権利条約」の条文には、日本政府訳やユニセフ抄訳もある。
※【子どもの権利条約とは何か、国連子どもの権利委員会委員長の大谷美紀子弁護士にうかがった「前編」はこちら!】
なぜ、日本の学校では、子どもが意見表明権を行使できないのか
なぜ日本の子どもたちは保障されているはずの「意見を表明する権利」を学校で行使できないのでしょうか。
日本の子どもたちが、子どもの権利条約第12条の権利を行使して、学校で自分の意見を表明していく環境があるのかといえば、「ない」というのが現実です。その理由のひとつは、1994年当時の文部省が日本での子どもの権利条約発効2日前に、坂元弘直文部事務次官名で全国の学校に出した通知(「5.20文部事務次官通知」)にあります。