「私はやはり、生きるために必要なものを提供すべきだと考えていて、それは『住宅』と『医療』と『介護』です。低年金者とって、家賃、医療費、介護費の負担は、本当に厳しい。日本では医療や介護はある程度、費用負担の軽減・免除制度がありますが、住宅に関しては国からの補助がほとんど何もない。この3点は国がお金を出して、保障すべきかと思います。
最低限の住宅・医療・介護の保障があり、孤立しないように地域社会に根ざした生き方をしていけるのであれば、女性は何とかやっていけると思います。
ほかには、食事の支援にしても、持ち帰って家で食べることになってしまうお弁当配布事業より、食堂のような居場所を作る事業がいいですね。高齢者も寄ることができる子ども食堂などで、地域で高齢者がいろいろな人とつながっていければ、高齢単身女性の日々は絶望的に暗いだけではないと思います」
せめて住宅を保障されていれば、大林さんは路上に追いやられなくて済んだはずだ。バス停で命を落とすこともなかっただろう。生きるための最低限の保障があれば、日本の単身女性たちも、未来を描けるのかもしれない。
東京都立大学教授の阿部彩教授の調査
阿部彩(2024)「相対的貧困率の動向(2022調査update)」JSPS22H05098, https://www.hinkonstat.net/
貧困ライン
日本における貧困ラインとは、等価可処分所得(世帯の可処分所得〈収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入〉を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額のこと(厚生労働省の定義による)。
『年金分割制度』
婚姻期間中に納めた厚生年金保険料を「夫婦共同で納めた保険料」とみなし、離婚時に分割する制度。2007年に制度開始。
遺族年金
条件を満たせば、死別した配偶者などが受給すべきだった年金の一部を、遺族が受け取ることができる制度。