水に関する問題となれば、納豆樹脂の出番です。マウスにごく少量の納豆樹脂を水と一緒に経口投与したのち、排泄物中の水の量を測定すると、体内に摂取した大部分の水が保持されることが分かりました。そこで、腎臓透析の専門医の立ち会いのもとで透析前の患者さんにほんの少しの納豆樹脂をコップ一杯の水と一緒に飲んでもらった結果、透析中にのどの渇きを覚えなかったと評価されました。納豆樹脂が体内で水を保持・滞留させることで、のどの渇きを軽減できる効果が確認できたのです。
これには後日談がありまして、食品衛生法では放射線の食品照射は禁止されているのです。しかし、例外があり、発芽防止のため、じゃがいもに放射線照射することは認められています。放射線照射されたじゃがいもは食べても問題ないとされているにもかかわらず、のどの渇きを軽減できる納豆樹脂を約31万人もおられる透析患者さんに提供することはできないのです。
社会に役立つ成果物の開発を目指す
納豆樹脂の有用性はさまざまな実証試験で確認できているのですが、汎用性資材としての製造コスト、市場動向、メーカーの事情、そして法律による規制など、実用には数々の複雑なハードルが立ちふさがっています。それらを個人の力だけでクリアしていくことは容易ではありません。しかし、今後も納豆樹脂の可能性を求めて挑戦を続けるつもりです。