「ナメクジ捜査網」開始!
巨大なマダラコウラナメクジの生息域は、どこまで拡大しているのでしょう。私たちはマダラコウラナメクジの目撃情報を募る「ナメクジ捜査網」というプロジェクトを2015年に始めました。おかげさまで、ホームページやツイッターなどを通じて、全国から目撃情報が寄せられています。写真を添付してくださる方が多く、目撃したナメクジがマダラコウラナメクジかどうかの確認が容易で助かっています。在来のヤマナメクジであることも多々ありますが、今後マダラコウラナメクジの認知度が高くなれば目撃件数も多くなると予想しています。目撃件数が多い地域があれば、現地へ出向いて調査していくつもりです。現在のところ、関西圏と東京都を除く関東圏からの情報提供が多い半面、残念ながら東京都や四国からはほとんどありません。「ナメクジ捜査網」のようなプロジェクトは、一般の方との情報交換となるオープンサイエンスとしても機能しますし、今後も気長に活動を続けていきたいと考えています。
マダラコウラナメクジに「置き換わる」のか?
マダラコウラナメクジの侵入により、新たな「ナメクジの置き換わり」が起こる可能性があります。実際に茨城県で調査してみると、ノハラナメクジは見かけますが、全国に定着しているはずのチャコウラナメクジはあまり見かけません。直接な関係は断定できませんが、マダラコウラナメクジは他種への攻撃性が強いこともあって、チャコウラナメクジや在来種のナメクジにとって代わる日がくるかもしれません。また、マダラコウラナメクジは体が大きいので、食べる量も多く、チャコウラナメクジでは大きな問題にならなかった食害も増えることが懸念されます。一方で、「ナメクジ捜査網」などによってマダラコウラナメクジが多くの人に注目されるようになると、駆除されやすい状況ができ、これ以上の分布拡大が阻止される可能性ももちろんあります。
マダラコウラナメクジの分布や繁殖時期、繁殖のしくみなどを長期的に追跡することは、侵入した場所の気候の違いなど、新しい環境に対して外来種がどう適応していくのか、そして種と種の関係性や、その周辺の生態系がどのように変化していくのか、という大きなテーマに迫る格好のケースになりえるのです。
身近な小さな生きものに興味をもって
多くの人は、身近にいるナメクジたちのことをよく知る機会がそもそもありません。ナメクジに限らず、怖い、嫌いだと思っていたものでも、よく見ると案外かわいい、そんなに気持ち悪いものではなかったということも、多分にあると思います。私たちの研究や「ナメクジ捜査網」のようなプロジェクトが、身近な小さな生きものたちに興味をもってもらい、その興味を発展させていくきっかけになれば幸いです。