なぜ占いを信じるのか
占いは未来に関する言及です。したがって、未来を展望したいから、人は占いを信じてみたくなります。「当たるも八卦当たらぬも八卦」というキャッチフレーズがあるくらいだから、実際に実現するかどうかは、実は問題ではないのです。人はあいまいな状況に耐えることが難しいので、何かを根拠にして明確なビジョンを持っていたいのです。それは今日一日の運勢のこともありますし、遠い将来の結婚のこともあります。ある学生の話
「私A型なんですけど、私の彼氏もA型なんですよね。A型といってもAOのA型なんです。両親は父がA型で母がO型。実はおじいちゃんもO型でおばあちゃんもA型なんです。だから、私もO型の人と結婚するんだろうなって思ってて。でも彼氏はA型なんですよね。(略)私の先輩にめちゃくちゃA型っていう感じの人がいて、めちゃくちゃ几帳面なんですよ。彼氏と結婚して子どもができたら、A型じゃないですか。自分の子どももあの先輩みたいになるのかと思うと、もう。嫌だなって…(略)。」血液型:性格判断と占いと
この学生は自分や家族の血液型という情報から彼との関係を「占って」います。その結果、血液型から現在付き合っている彼氏と自分が結婚できないこと、さらに2人の間に将来生まれるかもしれない子どもの性格を判断し、将来を悲観的にとらえるように語っています。血液型と性格の関係(以下、血液型性格関連説)は、もともとは1927(昭和2)年に古川竹二が心理学専門雑誌に発表した論文「血液型による気質の研究」に起因していて、その意味で学術的な理論でした。しかし、この学説は学問的に否定されました。一般的な性格判断として血液型を世間に広めたのは、1971年に出版された能見正比古・著「血液型でわかる相性」であると考えられています。その後、占い師の参入や、血液型に関連する出版物やグッズが製造されたことで、血液型は占い産業として発展しました。性格を知ることで未来を予想することができるなら、それは占いとしても機能するからです。血液型性格関連説は、学者の批判などを何度も受けますが、性格判断と占いのアマルガム(合金)として広く受け入れられているようです。、、に「血液型カルチャー年表」として血液型性格関連説のはやり廃りをまとめておきました。こうした考え方は日本を含むアジアに特徴的ですが、学校では決して教わりませんから、血液型性格関連説は日常生活の中で学習される性格理論と考えることができるでしょう。
肯定的信念の形成過程
「あなたは他人から好かれたいと思っているにもかかわらず、自分の思い通りに物事がすすまないと不安になる傾向があります。あなたは社交的で愛想がよい半面、用心深く遠慮してしまうときがあるようです。あなたの願望にはやや非現実的な傾向があるようですので気を付けましょう」このような文章を読めば、誰でも自分のことを言われている、と思うのではないでしょうか。ましてや自分の手相や血液型と関連づけて説明されたら、もっとそう思うのではないでしょうか。
占いをなぜ信じるのかと問われたとき、最初に浮かぶのは占いが的中した経験があるということです。占いが的中すれば信じる根拠となります。まったく当たった経験がないけど信じ続けるという人はいません。ではなぜ占いが的中するのでしょうか。本当に当たっているというよりは、当たった感じがしてしまう、というのが実際のところです。アメリカの興行師P.T.バーナムにちなんで、バーナム効果と呼ばれる心理的現象があります。それは、誰にでも当てはまるような性格の記述を、自分だけに当てはまるものだととらえてしまう現象です。先ほどの占い文章は、バーナム効果をたくさん含む文章で構成されていたのです。
また予言の自己成就と呼ばれる現象もあります。ラッキーアイテムは白と言われたので、白いものをもってでかけたら良いことがあった、というような例です。これは白いものを持って行かなくても同じことが起きていたかもしれませんが、その理由を占いにしてしまいがちなのです。
以上をまとめると、のような、「占う」→「占う結果を実生活に置き換える」→「占いが的中したと感じる」→「信念」という仕組みから、占いが的中した経験が生み出され、個人の持つ肯定的信念を強化してしまうのです。
占いを信じる事は悪い事か?
最後に、占いを信じる事は悪い事か?ということについて述べたいと思います。占いは友人と盛り上がれる話題でありますし、なにより面白いものです。しかし他方で、血液型だけで相性を判断してしまう場合や、占いだけで将来を決定してしまう省エネ思考が見受けられます。また、詐欺をする際に占いが利用される場合もあります。ですから、楽しいだけで済まされない事態に陥ってしまう可能性も十分に考慮しなければならないのです。