中国旅行サバイバル術1
鈴木勝(桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授)
北京オリンピックが開かれる8月8~24日はお盆シーズンでもあり、大勢の日本人が中国を訪れることが予想されたが、毒ギョーザ、チベット暴動、四川大地震、さらに新疆のテロと、立て続けに人災や天災に見舞われ、やや精彩に欠けるオリンピックとなっている
。と言いつつも、それなりに旅行者の賑わいはあるようだが、今後、同様の事件や事故が発生しないとは言い切れない。この国の治安や安全管理には、他の国にはない特殊事情が大きく横たわっていることが露呈したからだ。
何事もなければそれに越したことはないが、万が一何かが起きてしまったら……。現在は、いつ「第2の天安門事件」が起こっても不思議でない状況ともいえる。では、出発から帰国まで、これらの事件・事故にどんな準備をしたらよいか、実際面ではどのように対応したらいいか、あらかじめ知っておけば安心して中国旅行を満喫できるはずだ。
上手な海外旅行保険のかけ方
旅行中は何が発生するかわからない。中国での入院費や治療費は「外国人特別料金」がかかり、決して安くない。したがって、海外旅行保険はもっとも頼りになる存在。ぜひ加入を薦めたい。
問題は「クレジット・カード付帯海外旅行保険」。中身を事前にチェックしよう。補償額も少ないのが一般的。加えて、中国では航空機遅延がよく起こるが、この「遅延費用」は対象外なので、できれば任意の「上乗せ保険」をどうぞ。
「頼りになる旅行会社の選択」と「中国ツアー&ホテルの上手な選び方」
いざとなったら、旅行会社は意外と頼りになる。これは「日系旅行会社」と「中国系旅行会社」の2種類に大別できる。
前者のチェック項目は、(1)中国の特殊業務経験が豊富で、事故・事件の際に機動力を発揮してくれるか、(2)中国に自社のオフィスを持っているか、またはそれに近い契約の中国側旅行社があるか。現地オフィスを持つ場合、大使館・領事館、中国政府・国家観光局、航空会社等へのコネクションもあり、影響力も強い。
後者の「中国系旅行会社」では、複数の都市への旅行には、規模の大きい自社ネットワークを持つ旅行会社を選ぶことが望ましい。
次に、「中国ツアーの選び方」。今回の旅行は「格安航空券+ホテル」か、または、「旅行会社主催の『中抜き』パッケージ・ツアー(往復航空券+ホテル、一部バスを含む)」か。両者の長所・短所をよく比較しておこう! 現下の事故・事件が続いた中国では、なるべく後者の掘り出し物を探そう! なぜならば、テロや暴動などが起きたときには、旅行会社の「主催者責任」に頼る部分が大きいからだ。ある程度これに依拠しつつ、旅行者自身のサバイバル作戦で不備をカバーするのが得策だろう。また、病気などによる直前の帰国日変更なども無料の場合が多い。これは、格安航空券では全く期待できない。
そして「ホテル選択」だが、日本人旅行者の泊まるホテルは、デラックス(5ツ星)からエコノミー(3ツ星)のグレードまでが一般的だ。この場合、エコノミーの上級部屋を選ぶより、デラックスの下級部屋を選ぶのがコツ。治安・安全面、サービス面、病気の際のドクター手配などを考慮すれば、デラックスホテルに軍配が上がる。また、最近、急増の「外資系スタンダードホテル」(3ツ星)もお薦め。
中国旅行必携:ガイドブック、トラベラーズ・チェック、生活用品etc.
ガイドブック:最新版の購入を! オリンピックを機にかなり道路や建物が変更されている。肝心なのは、緊急時の連絡先(電話番号)と場所(病院、公安、大使館・領事館)などが最新情報かどうかだ。また、北京や上海など1カ所のみの旅行でも、「中国全土版」と「各都市版」両種のガイドブックを持参しよう! 中国全土版だけでは緊急事態の際に役立つ詳細な地図も少なく、使い物にならない。他方、緊急事態(例えば悪天候やテロなどに遭遇した航空機)で他都市に緊急着陸するケースがあり、このような場合一都市だけの版では、全く対策が立てられない。加えて、現地到着後、中国語版の各都市最新地図をぜひ購入しておきたい。デモやテロなどの際には、大通りは遮断される。したがって細い裏通りを迂回し目的地に行くしかない。これは筆者がかつて「天安門事件」に遭遇して得た教訓である
。
トラベラーズ・チェック&クレジット・カード:盗難予防として、クレジット・カードやトラベラーズ・チェックの持参を。しかし、天安門事件クラスに進展しそうな状況の場合、「キャッシュ」に替えておこう。それも「米ドル」で! 衰えたりとはいえ、いまだ円と比較すれば流通性はかなり高い。
常備薬:病気に備え、使い慣れた常備薬(風邪薬、鎮痛剤、下痢止めなど)の持参を。初めての薬は、かえって体調を崩すこともある。
中国人の友人用に土産を
短期旅行でも、中国人と知り合いになる機会はある。そんな知人が、いざという時にあなたを助けてくれるはずだ。お土産の準備をしておこう。高級和菓子のような日本ならではのものや、ファッション誌など最新の日本情報を伝えるものが喜ばれる。
(次回は「滞在中の心得」について述べる。)
著者情報
桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授
鈴木勝
すずき まさる
1945年生まれ。67年早稲田大学商学部卒、JTB(日本交通公社)入社。北京事務所長、JTBアジア・取締役日本支社長、大阪観光大学観光学部教授等を経て、2008年より現職。専攻は国際ツーリズム振興、旅行業経営、観光マーケティング。近著に『観光立国ニッポン事始』(08年、NCコミュニケーション出版)、『観光後進国ニッポン、海外に学べ』(09年、NCコミュニケーション出版)、『観光立国ニッポンのための観光学入門―実践編―』(11年、NCコミュニケーションズ)、『観光立国ニッポンへの処方箋―がんばれ! 地方自治体&地域―』(13年、NCコミュニケーションズ)などがある。