そのとき、残されたプロ野球の6球団や、二軍のイースタンとウエスタンの両リーグ、さらに独立リーグなどは、どうなるのか? メジャーの下部組織としてAAAクラスのリーグに再編されるのか? そして、社会人、大学、高校のアマチュア野球は、MLBのドラフトの対象となるのだろうか?
さらに、このような動きに対して、ファンはどのような反応をするのか? 日本の国内にメジャーリーグが誕生することを喜び、歓迎するのか? それとも、アメリカの進出による日本の「野球文化」の破壊に反対の声をあげるのだろうか?
メジャーが提示する日本野球の未来像
はたして日本野球の未来は、どのように変貌(へんぼう)するのか? それは容易に予測できない。が、確かに言えることが、ひとつだけある。それは、すでに述べたように、現在の日本のプロ野球には、10年後、20年後といった将来の目標や、未来の青写真が存在していない、ということである。プロ野球界全体の未来像が存在しないところへ、確固たる未来の計画が外部から持ち込まれたら、いったいどうなるか?おそらく、多くの野球選手、野球関係者、野球ファンが、メジャーの提示する「日本野球の未来像」に引きつけられるのは、火を見るよりも明らかだろう。
08年秋、社会人ナンバーワンの田澤投手が、史上初めて日本のプロ野球を経ずに、アメリカのメジャーリーグに入ることになった。それは、ただ有力な選手をアメリカに奪われた、というのではなく、日本の野球の未来をどうするのか? という緊急にして重要な問いかけだったことを肝に銘じ、早急に行動を開始しない限り、早晩、日本のプロ野球はアメリカのMLBに呑(の)み込まれるに違いない。
ドラフト
日本では、主に「新人選手選択会議」を指す。MLBでは、ほかに他球団のマイナー選手を指名する「ルール・ファイブ・ドラフト」や、新規参入球団に既存チームから選手を分配する「エクスパンション・ドラフト」などがあり、日本でもチーム合併に伴う余剰選手の分配を目的とする「選手分配ドラフト」や、支配下登録選手枠65人を超えて選手を獲得したいときに採用する「育成選手ドラフト」がある。アメリカンフットボールのプロリーグ「NFL」が1936年に始め、他のスポーツにも広がった。MLBと日本のプロ野球は65年から採用。日本では目まぐるしく制度が変わったが、メジャーは一貫して下位チームから順に指名する完全ウェーバー制(イミダス編)。
ポスティング制度
メジャー球団による日本プロ野球所属選手への入札制度。主にFA権を持たない選手がメジャー移籍を望んだとき、所属球団の了承を得て行われる。その際、所属球団はコミッショナー事務局を通じてメジャーリーグ機構に当該選手を通達。メジャーリーグ機構は全30球団にこれを告知する。当該選手に興味がある球団は、機構側に入札額を提示。単独ならそのチームが、複数球団が応札した場合は最高額を提示したチームが、日本側球団との交渉権を得る。選手はFA権取得前の全盛期に移籍できるが、移籍先を選べないことや、日本の所属球団が落札した球団との交渉を拒否できるなど、問題点も多い(イミダス編)。
FA
フリーエージェント(Free Agent)。本来は、所属球団との契約が終了し、どの球団とも自由に入団交渉・契約ができる状態のこと。日本でいう「自由契約」(実質的には解雇)もこれに含まれるが、日本では、自由に移籍できる権利と考えられている。メジャーでは6年で取得できるが、日本では、国内移籍で最短8年(2007年以降の入団選手は1年短縮)、海外移籍は9年かかる(イミダス編)。
WBC
ワールド・ベースボール・クラシック(World Baseball Classic)の略称。メジャーリーグコミッショナー、バド・セリグの提唱により、メジャーリーガーも参加する、オリンピックに代わる野球界最高峰の国際大会を目指して発足。2006年に第1回大会が開かれ、王貞治監督率いる日本が優勝した。第2回は2009年に開催される。開催時期や投手の投球数制限、複数の国の代表資格を持つ選手など、まだ解決すべき問題は多い(イミダス編)。
メジャーリーグ極東地区
千葉ロッテのボビー・バレンタイン監督や、作家のロバート・ホワイティングなどが言及している。具体的な構想や進捗(しんちょく)状況については、まだ伝聞・推測の域を出ないが、2008年11月24日、大リーグ、ピッツバーグ・パイレーツがインド出身のリンク・シン、ディネシュ・パテル両投手とマイナー契約したことが報じられた。2人は野球経験がほとんどなく、野球選手発掘を目的としたインドのオーディション番組で3万人の応募者の中から選ばれたのち、アメリカに渡って名コーチのもとで半年ほど訓練を受け、11月12日のトライアウト(入団テスト)で結果を出したのだという。これを見ても、メジャーが本気で世界戦略を展開しつつあることがうかがえるだろう(イミダス編)。