実は女性も草食系
恋愛にも出世にも興味がなさそうな「草食系男子」。彼らとの対比で、20~30代の女性が「肉食系女子」と呼ばれる機会も増えた。婚活ブームの影響もあるだろう。30歳前後で「婚活を経験したことがある」女性は65%もいて、 合コンなどで“狩り”を続ける一部の女性が「肉食系だ」と揶揄(やゆ)されることも多い。だが「いまも婚活中」と答える女性は、半数以下の31%のみ。思うような結果が出ないこともあり、「ノリで婚活したけど飽きた」「疲れた」と、“婚活疲れ”を口にする女性も目立ち始めている。
恋人がいない女性も、予想以上に多い。20~30代で「交際相手がいない」未婚女性は63%と、6割超。10年前に比べて1割以上も増えた。そのうち「交際相手が欲しくない」も23%。実は女性たちも、多くが“草食化”しているのである。
30代4人に1人が未婚女性
1980~90年代にかけて、女性のライフスタイルは大きく変わった。80年代半ば、「均等法(男女雇用機会均等法)」の施行(86年)前後に就職した女性は、まだ社内で“男女平等”を味わえる環境になかった。入社3~4年で「結婚はまだ?」と肩たたきに遭い、泣く泣く職を捨てたケースもある。当時は「三高(高学歴、高年収、高身長)」男性との結婚がステータスで、20代前半で寿退社した女性も多かった。いわゆる「働きそびれ」だ。
だがその直後、90年代に入ると、仕事に意欲をもつ、いわゆる「バリキャリ(バリバリのキャリア)女性」が台頭し始める。自分で自分を養えるようになった女性たちは、無理に「永久就職(結婚)」しなくなった。結婚・出産を後回しにして、働く楽しさを追求する傾向が強かったのだ。
このことが、「嫁ぎおくれ」「産みそびれ」を助長した。女性の晩婚・未婚化は90年代半ば以降、驚くほど加速、2005年には、30代未婚女性が4人に1人に達した。それを象徴するのが、「30代以上で未婚・子ナシ女性は『負け犬』か?」を問う、一連の「負け犬論争」(03年~)である。
結婚は不安がいっぱい
未婚女性は、実生活では「負け犬」どころか「勝ち犬」だ。いまや結婚するまで、親と同居する女性が20~30代の約8割。そのうち3割以上が実家に1円もおカネを入れていない。親と暮らす限り、家賃や食費、光熱費などはほとんどかからない。可処分所得が高く、稼ぎの多くを好きなように遣える。
それに比べて、結婚には“不安”がつきまとう。
現在、20代男性の平均年収は321万円、30代男性では492万円。さほど悪くないように見えるが、実は二極化が顕著だ。とくに20代には“非正規(雇用)”の男性が2割いて、その8割以上が「年収199万円以下」である。
30代でも、「年収400万円以上」の6割以上が売約済み。25~34歳で「年収600万円以上」の未婚男性は、なんと3.5%しか残っていない。だから独身女性はため息をつく。「結婚しても、あまりいいことがなさそう」と。「親と暮らすいまの生活を、失いたくない」と。
現実路線の選択
だが一方で、未婚女性はすでに気づき始めている。「親はいつかは、自分より先にこの世を去る」と。「いまの生活が、未来永劫続くわけではない」と。だから“おひとりさまの老後”に備え、30代でマンションを買う女性もいる。「これがラストチャンス」と、真剣に“崖っぷち婚活”に賭けるアラフォー(アラウンド40。40歳前後)もいる。
20代女性の一部は、さらに賢い。同年代の男性があまり稼いでいないのも知っていて、結婚相手(男性)に求める年収を、少しずつ下げ始めた。最近は、「(相手の)理想年収は600万円以上、でも妥協年収は400万円以上」「私も働くから、世帯年収で700~800万円で十分」などと、現実路線を口にする女性も増えている。
産活も必要
現実的なのは、結婚だけでなく出産についても同じ。最近は、婚活ならぬ「産活」に乗り出す女性もいるようだ。たとえば、貯金をして1年に1度、子宮の健康をチェックする「婦人科検診」を受ける。あるいは、生理予定日や排卵日などをメールで教えてくれるケータイサイトの「ルナルナ」(エムティーアイ)に登録、日ごろから排卵日をチェックして、その前後に夫と子づくりする、といった具合。働きながらもセルフチェックを心掛け、いつでも産めるよう「産活」に努める、というわけだ。
いまや、50歳前後で結婚する「アラフィフ(アラウンド50)婚」も珍しくなくなった。結婚は、いくつになっても遅すぎることはない。
だが出産は別だ。残念ながら、女性の子宮や卵子の機能は“35歳”を機にガクンと老化に向かう。ある調査では、35歳を過ぎて出産した女性のうち4割強が不妊治療を受け、3割弱が「排卵日の前後に性行為をした」と答えていた。つまり7割が、計画的に子づくりしていたわけで、このことも35歳以上で“自然妊娠”の確率が極めて低いことを裏付ける。
産みどきがあるという現実
多くの女性にとって、いまも(生理的な)産みどきは「35歳ぐらいまで(初産)」。だから「遅くとも32~33歳までに結婚を」と考える、現実的な20代女性が多いわけだ。
そして09年、時代もようやく「産みどき」に入った。
民主党政権の誕生を機に、母子加算の復活や「子ども手当」の支給が始まるのだ。2万人を超える「(保育園・幼稚園の)待機児童」の問題も、解消に向かうだろう。
10年6月には、改正育児・介護休業法も施行予定。この法が施行されれば、 “パパ”の子育てがいま以上に後押しされる。たとえば育児休暇。現在、ママ(女性)の9割以上が取得している同休暇を、パパ(男性)は1%しか取れていない。これを10年以内に「取得率10%超」にまで伸ばそうというのが、国の狙いだ。
専業主婦は1割もいない
先日、社会学者の山田昌弘氏にお会いして、衝撃的な事実を聞かされた。それは「今後専業主婦になれる女性は、1割もいない」という事実。男性の年収が伸びないのが、最大の理由だ。実はいまも、いちばん下の子(末子)が小学生以上のママの6~7割が働きに出ている。専業主婦は、すでに3割強しかいないのだ。
だとすれば、女性が安易に“職欲”を捨てるのは絶対にもったいない。
いまや「婚・産・職」、3つそろった「トリプル婚」も可能な時代。未婚女性には、ぜひ「産みどき(30代前半~半ば)」から逆算した「嫁ぎどき」を意識して欲しい。