ミュージアムの個性と魅力を高めるカフェ、レストラン
ということで、ミュージアム界では、世田谷美術館の成功に続けと80年代半ば以降にいろいろと試行錯誤が続きました。京都文化博物館(88年10月開館)の江戸時代末期の京の町家の表構えを復元した「ろうじ店舗」での京都風な飲食店、86年に新築された京都国立近代美術館のテラスのある喫茶室「カフェ・ド・505」(caf de 505)もその試みの好例です。
この背景には、旧来のミュージアムのあり方に対して、バブル経済期を経て利用者が求めるミュージアム観が変化してきたこと、さらにバブル経済の崩壊で文化施設の予算も削減されたことや全体の景気の落ち込みからの利用者減少といった危機感が生まれたことがあげられます。利用者の視点をミュージアム経営にどう反映していくか、ただ単に「のどの乾きを癒やすだけでいい」という存在から、例えば近現代の日本画コレクションで知られる山種美術館(東京都渋谷区)の「Cafe 椿」のように老舗菓匠「菊家」と提携して展覧会ごとに特別に作られる和菓子を提供するとか、東京国立近代美術館(同・千代田区)のように緑豊かな皇居を望む立地を大いに活かし、有名シェフ・三國清三氏のレストラン「ラー・エ・ミクニ」(L’art et MIKUNI)できちんとしたコース料理で高級感を打ち出すなど、さまざまにミュージアムの個性を引き出し、魅力を高めるカフェやレストランとして真剣に捉えられています。
ミュージアムカフェ、レストランを経営するとしたら
さて、知的で、ロケーションもすてきなミュージアム。そこのカフェやレストランを経営するって、夢のような話に聞こえるかもしれません。でも、これが難しい側面もあるのです。つまり、立地をかえられないこと、展覧会の内容によって集客に差があり、また客層がかわること、多くの場合に夜間営業ができないので、単価の低いティータイム、ランチが中心であること(夜間営業する場合はミュージアムの動線とは別に出入り口や駐車場が必要)などです。経営的に成功しているミュージアムレストランがどんなポイントを押さえているのかを表にしてみました。
とはいえ、ミュージアムは規模もジャンルも立地もさまざまです。ミュージアムのカフェ、レストランのリテラシーを高め、多様に味わい、楽しみたいものです。