出産祝いは卵のオンパレード!
出産がおめでたいのは万国共通。チッチが生まれたときも、たくさんの人がお祝いに来てくれました。そのほとんどが義母のパンデー仲間で、私が知らない人まで! しかもアポなし……。お客さんがいる間は、昼寝やおっぱいマッサージができません。出産直後で体力的にはきつかったけれど、チッチの誕生を祝ってくれる人がこんなにもいるのだと、うれしくもありました。ただ、お祝い品がカブリすぎ! ほぼ全員が「卵」を持って来るのです。一人が最低でも20個、多い人は50個も! ある見舞い客に「卵屋さんが開けそう!」と冗談を言ったところ、なぜかウケない……? 帰り際にその人が「これ食べてね」と卵を差し出したときには、苦笑するしかありませんでした……。
そうしてたった数日で250個もの卵が集まり、「卵ばっかり!」と、ついグチってしまった私。すると夫から、「ミャンマーでは出産祝いは卵なんだから、仕方ないよ。何も持って来ないのも変だろう」とオトナのご意見でなだめられました。
1日5個、義母の卵攻め
なぜ、出産祝いが卵なのか? 「卵を食べるとおっぱいがよく出る」と言われているからです。逆に、体を冷やすなどの理由で、産褥(さんじょく)期は禁止されている食品がたくさん! このため卵と白菜、鶏肉くらいしか食べるものがなく、産後1カ月間、卵を毎日5個ずつ食べさせられるハメに。続く2カ月間は、毎朝、半熟卵2個入りのホットミルク攻撃。小さいころ卵アレルギーだった私は、とうとう耳たぶが切れてしまいました。もちろん、何度も義母に訴えましたよ。「アレルギーだから、卵は1日1個まで」と。ところが訴えるたびに「えっ、アレルギーなの!?」と、新鮮な驚きを表現する義母。そして、翌朝もやっぱり卵……。私の話、聞いてない……。
そんな義母も耳たぶが切れたのを見て、ようやく私のアレルギーに関心を示してくれるように。数日後、インターネットで「卵は1週間に4個まで」という記事を読んだ義母は、ようやく卵攻めをストップしてくれたのでした。
布団も毛布もカブリすぎ!
卵は子どもの誕生を祝うプレゼントというよりも、産後の女性の体をいたわるお見舞い品と言えます。もちろん、チッチの誕生を祝うプレゼントもたくさんいただきました。お菓子やベビー服、布団セット、毛布などです。しかし、これらもだだカブリ!日持ちするお菓子はカブっても大丈夫。同じデザインで色違いというベビー服のカブリもOKとしましょう。困ったのは布団セットと毛布です。
出産前、買い物に行ったとき、義母が「これも買う!」と言い張ったのが布団セット。すでに義弟からもらっていたので、「家にあるから」と必死で制した私。しかし、このときも聞く耳持たず……。というわけで、チッチが生まれる前から、わが家にはふたつの布団セットがありました。加えて、お祝いのカブリが4セット。現在のわが家には、布団セットが六つもあるのです。
毛布も同じく出産前から1枚あったのですが、義母がなぜかもう1枚購入。その後6枚もらいました。しかもそのうちの1枚は、デザインも色も何もかも義母が買ってきたものと同じ! 結局、いただいた毛布で使っているのは1枚だけです。
だだカブリ現象はなぜ起きる?
カブった布団セットや毛布はきれいに保管しています。ほかにも七つのぬいぐるみと、ベビー用スキンケア用品など、使わないものはきれいに保管。どうするのか? 誰かの結婚祝いや出産祝いに使い回すのです!悪っ!……なんていうのは日本人の感覚で、ミャンマーでは当たり前。おそらく、さまざまなプレゼントの半分以上が使い回されていると思われます。というのも、ミャンマーでは、プレゼントのだだカブリ現象があちこちで起こっているのです。
その背景のひとつは、プレゼントに適した洒落た品物がミャンマーにはまだ少ないこと。このため、結婚祝いはコップセットやシーツが定番、出産祝いは布団セットが定番となっています。そしてもうひとつが、ミャンマー人の見栄っ張り精神。たとえば、結婚式にはご祝儀(お金)を持って行ってもいいのですが、金額が少ないとパッとしませんよね。だからほとんどの人が、お金のかわりに大きくて見栄えのよい定番商品をプレゼントとして持って行くのです。プレゼントのだだカブリ現象は、これらの相乗効果の産物と言えます。
使われないまま、ずーっといろんな人の間をタライ回しにされているプレゼントもあるんだろうなぁ。今、わが家で保管している布団セットも、チッチの弟か妹が生まれたときに戻ってきたりして?
誕生日は「もらう日」ではなく「おごる日」
プレゼントといえば、3月の私の誕生日、職場の友人がロンジー(巻きスカート)とケーキをプレゼントに持ってきてくれました。そもそもミャンマーでは、誕生日にプレゼントを贈る習慣はなく、逆に誕生日の人がみんなにごちそうをふるまいます。だけど、子育て真っ最中の私には食事会などできるはずもなく、友人のプレゼントはうれしいサプライズでした。そして、私の誕生日だと気づいた義母からも「好きなものを買いなさい」と、5万チャット(約5000円)のプレゼント!ミャンマーでは、家計が一緒の家族に何かをプレゼントするよりも、好きなものを自分で買ったほうが良いという考えが一般的です。義母によれば、義父も義弟も奥さんにプレゼントをしたことは一度もないとか。その日は夫からのプレゼントはありませんでしたが、恋人時代、私は二度もプレゼントをもらっています。その話をすると、「まーっ! 私の息子ってば、そんなことができるのね!」と驚いていました。
ちなみに、夫からもらったプレゼントは金のネックレスとブレスレット。ミャンマーでは金のアクセサリーが人気で、その値段はデザインよりも重さで決まります。それぞれ3万円くらいでしたが、デザインはいまいち……。でも、何事にも心ときめく恋人時代のこと、夫の気持ちがうれしくて、毎日つけてましたよ。
家計の管理にも民族性あり
「家計が一緒の家族にはプレゼントをしない」。そう聞くと、ミャンマーの家計事情が気になりませんか? 知人によれば、ミャンマーでは、中国系とインド系は男性が、ミャンマー人は女性が家計を管理するのが一般的だとか。夫が中国系であるわが家も例外ではありません。私は夫から生活費をもらい、それがなくなったら夫に請求するというパターンです。あるとき「日本では妻が家計を管理して、夫にお小遣いをあげる家庭が多いんだよ。うちの親もそうだし」と話すと、夫は「じゃあ外食のときは、妻が支払いをするのか?」と大笑い。「そうだよ」と答えると「うっそー!」と、心底驚いていました。
しかし、男の見栄がそこまであるなら、誕生日の妻にプレゼントがあってもいいんじゃない? あっ、絶対にカブらないプレゼントをもらってました。「今日はハッピーバースデーだよ!」と催促したら、笑顔でうなずいてくれたのです。その笑顔だけで、しばらくハッピーな気分で過ごせた私って、どんだけ安上がりなの?