もちろん、最初から「様々なこと」を知るのは難しい。だからこそ、まずは自分の好きなことを起点に知識の体系を広げていくのが良い。よく知らないことに表面的な理解で首を突っ込むのではなく、自分が大事にしているテーマについて深く考えるために必要なことから学ぶ。そのアプローチこそが、その人なりの社会への眼差しを育む早道である。
自分の思っていることを感想として的確に言葉にできる。その感想の裏側には、自身が培ってきた価値観と社会に対する目線がある(『ファスト教養』ではこの2つを「ルーツとシーン」と位置づけている)。偉大な先人たちの言葉を借りれば、「直観」「情熱」「勘」と「知力」の融合を目指して、そういった見識を得るための道を先入観に囚われることなく便利な道具も活用しながら切り開く。「ファスト教養」の磁場が一般化し、批評が煙たがられる時代に、少なくとも「自分は知性がある」と自負する人たちはこの姿を目指すべきではないか。それこそが、次の時代に求められる教養のあり方を考えるうえでの第一歩である。