約2週間ぶりに会う少年に、インタビューの時と同じ施設の部屋でユニフォームを渡すと、「グラシアス(ありがとう)!」と、うれしそうにそれを体にあててみながら、「サン・ペドロ(スーラ)へ行ってきたんだぁ~」と、私たちの顔をしげしげと見つめた。
そこでカメラのモニターを使って、撮影した彼の故郷、リベラ・エルナンデスの風景を見せる。すると、「そうそう、ここがスーパーで、この通りの向こうが僕の住んでいた地区で――」という具合に、かつての生活を思い出しながら、説明してくれた。私たちが訪ねることで彼や家族に何か危険が及ばないよう、彼の祖父母の家には行かなかったが、その周辺の風景だけでも十分に懐かしい様子だ。
半年ほど前にできたばかりの「リベラ・エルナンデス公園」の写真をみせると、とたんに少年はひどく驚いて、こう叫んだ。
「ええっ! こ、これがあの公園!? うそみたいだ。僕が仲間といつもたむろっていた頃は、ほとんど崩れて、断片的にしか残っていないブロック塀があるだけで、何もなかったのに……」
じっと写真に見入っている彼に、「ここにはいろんな遊具もあるのよ」と別の写真も見せると、ますます目を丸くした。
「公園の変わり様は、今日一番の衝撃だったよ!」
帰り際、アンドレスは感慨深げに、その言葉を繰り返した。その様子はまるで、故郷に小さな希望を見い出したかのような、微笑ましいものだった。
彼は今、サッカーで骨折した足も完治し、ホテルの仕事に復帰して、新しい人生をまっすぐに歩んでいる。年明け2016年には、施設を離れ、いよいよ自立生活に入る。
「ラテンギャング・ストーリー」12 異なる選択肢
(ジャーナリスト)
2015/12/28