「外国人」による性売買が問題とされる中、今国会で高市首相が「買春処罰」に言及した。被害者の年齢にかかわらず、買春者と業者を処罰する法律を制定し、買春が人権侵害であるという認識を社会の共通認識にしなければ、加害者が加害しやすい状況はなくならない。そうしたことでの買春処罰は歓迎だ。しかし、高市首相は「売買春の根絶」という言葉を使っており、女性が罪に問われる規定は変えられず、脱性売買支援もないままに、買う側の処罰さえ行えばよいということにされないか心配している。現行の売春防止法では「売春」した側のみが処罰される。保護法益は、人権ではなく、性を売る女性によって乱される社会の風紀を守ることに置かれている。売春処罰はそのままに買春も罰する、ということでは本来被害者の立場にある女性たちの状況はよくならない。今も買われた女性たちが被害を訴えられないのは、女性が処罰の対象になっているからだ。本当の意味で被害者を保護し、支える仕組みを作ることが必要だ。
すでにスウェーデンやカナダ、フランス、韓国などには、買春処罰と性を売る状況にある人の非犯罪化、脱性売買支援を行う法律がある。女性が性売買から脱することができるようにするには、そうした法制度こそが必要だろう。
買春処罰の導入されている国では、それ以前に性売買店が禁止されている。例えばフランスに至っては、80年も昔にである(1946年成立)。一方、日本では風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)で性売買が合法化されている。「(男性器)挿入」以外のあらゆる性行為が「性交類似行為」として認められ、風営法上の届出を提出すれば誰でも営業できる。キスやフェラチオ、全身を舐めることや、性器同士を挿入せずにこすりつけること、食糞や飲尿、足かせや手かせをつけての性行為、ロウソクの蝋を体にたらすなど、あらゆる暴力行為も実際の風俗店で日常的に行われている。
そのような女性に対する虐待、性暴力が、「サービス」として扱われ「営業」や「産業」化していること自体が問題だ。
高市首相の「買春処罰」発言からの社会変化は
今の日本では、路上売買春だけ取り締まりの対象となっても、「お店に行って働け」「お店で買え」ということになってしまう。それでは搾取の構造が変わらない。実際に今、風俗店業者が、「ここにいたら危ないから店に来ないか」と路上に立つ女性たちを勧誘している。
性風俗店も含めて、性売買が女性に対する暴力であり、人身取引であり、人権侵害であるという認識を多くの人が持ち、性搾取のない社会に向けて行動する一員になる必要がある。
国会で高市首相が「買春処罰」に言及した後も、夜の街にはものすごい数の買春者が集まっている。私たちは毎晩、50人以上は確認している。今までも、路上「売春」が問題として報じられる(本来は「買春」が問題でなければならない)度に、街に買春者があふれ出すことが繰り返されてきた。彼らが堂々と買春できる状況は、世界的に見ても異常だ。警察は、現行法に基づき、女性たちに「売春は犯罪です」と警告し続けており、他国のジャーナリストや弁護士、議員、警察等にそれを見せると、驚かれる。
もうすぐ今年も終わる。Colaboにとって年末年始は、毎年とても忙しくなる時期だ。寒くなる中、家族が家にいると安心して過ごすことができない子どもたちの状況が悪くなる時期だからだ。それなのに、公的機関は年末年始は閉まっている。
今日も路上では、少女たちを管理売春させている半グレ組織の少年たちや、性売買業者のスカウトたちが活発に活動している。業者も買春者らも年末に向けて活動を活発化させる。私たちもますます力を入れて活動しなければならない。
26年は、より多くの人に性売買の実態を伝えることに注力していきたい。皆さんもぜひ、この連載を通して現実に向き合い、問題意識を周囲の人と共有してほしい。