加藤 長毛種は舐めても舐めてもきりがないし、舌に絡まるから嫌になっちゃうのかもしれませんね。もともと猫は短毛の動物だから、長毛は毛づくろいをするには不便ってことですね。毛玉は吐きませんか?
桜沢 毛玉を吐くのはメロだけですね。グレとルルはグルーミングしないので吐かないです。だから、ブラッシングはやるようにしています。
加藤 3匹、仲はいいですか?
桜沢 良くないわけでもないけど距離感は保ってますね。グレとルルは同じヒマラヤン同士だから、ノリが似てるんですよ。
加藤 どういうノリ?
桜沢 人間への態度というか、私たちは好きにやってますから、そちらもお好きにどうぞっていう感じですかね。前の猫のあけみは、お客さんが来ると、「あなた誰?」って玄関に出てきて、「うちに入るの許すわよ」みたいな感じで興味を持ったんです。でも、グレやルルは全くそういうのがなくて、お客さんがいると時々チェックしに来るけれど、「ここは私の家なので好きな所で過ごします」みたいな感じ。結構気ままな猫2匹で、そんなに甘えることもなく、人との付き合いも薄いんですよ。だから、あれ? 猫ってこんなだったっけって感じ。
加藤 メロちゃんは?
桜沢 スコティッシュフォールドってもともと雑種なので、メンタルが日本猫っていうか、以前飼っていた猫たちに近くて、甘えてくるし、人が移動するとそれに付き合って、一緒に部屋を移動する感じで、猫種によって性格って随分違うんだなって思いました。
ギュッと抱きしめられると諦める!?
桜沢 それにしても、加藤さんちの猫は人懐こいんですね。チビちゃん、さっきからずっと私たちがいるこのテーブルの上ですもんね。加藤 チビはお客さんが来るといつもこんなです。「いらっしゃ~い」って感じで、私は「お水猫」って言ってます。もしくは、「参加型」(笑)。まるは17歳だからもうヨボヨボです。
桜沢 まるちゃんの目はどうしたんですか?
加藤 子猫の頃、知り合いの獣医師に保護された時には、もう目の周りが化膿してて片目がなかったんです。で、飼ってよと言われて、こういう猫だから長生きしないだろうと思っていたら17歳。
桜沢 うちにいたカッチーも似たような感じでした。片目がなくて、もう片方も白い膜がかかっちゃって、ほぼ見えていなかった。でも、面白いなと思ったのは、目が見えてない分、踏ん張りながら暮らしていたのか、すごく筋肉質のたくましい体つきでした。カッチーも18歳くらいまで生きましたよ。
加藤 やっぱり長生きしたんですね。あら、チビ、いいね。撫でてもらって。久々の短毛の手触り、どうですか?
桜沢 そうそう、短毛って触るとこんなだったなって思い出しました。何て言うか、体温が直接伝わってくる感じ。ダイレクトに猫の体温を感じられますね。
加藤 それは確かに言えますね。長毛だと毛皮着てるようなものでしょ。そうすると冬になっても布団の中に入ってきて一緒に寝ないですか?
桜沢 寝てくれないです。
加藤 それはちょっと寂しいですね。
桜沢 長毛ってもっとベタベタ甘えてくるかと思ったんですが、そうではなかった。あ、でも、先代の3匹たちは、抱っこがあんまり好きじゃなかったのですが、抱っこはしっかりさせてくれますよ。前の3匹は抱っこされたくない時は、「嫌だ」って体をよじって腕から飛び出しちゃうのに、今の猫たちはギューッと抱きしめると諦めるのか、くた~って力が抜けるんです。あ、今、諦めたなって瞬間がわかる(笑)。私や夫はしつこくしないんだけど、中学生の娘がしつこいんですよ。猫を抱きしめて「ママ見て~。今、諦めたよ」って言うから見ると、ホントに死んだような目をして諦めた顔で抱かれています(笑)。
加藤 アハハハハ。諦めるって面白い表現ですね。抵抗せずに諦めることを猫は学習したのかな。
猫の食い扶持は猫自身が稼ぐ!?
加藤 猫のどこを漫画のネタとして拾い上げるかはその人の感性ですよね。ささいな日常のどこを切り取るか。あ、これ漫画のネタになるっていうポイントはきっと人によって違うんだろうなって思うんですよ。桜沢さんは、猫の面白さってどんなところを見ているんでしょうか?桜沢 うーん。さっきもお話ししたように形は好きですね。でもまあ、何しててもかわいいじゃないですか、猫って。どこを、というよりは猫は全てのポーズがかわいいから描くのは楽しいですね。その辺に寝そべっているところもかわいいし、顔洗ってるところもかわいいし。
加藤 桜沢さんが漫画を描く上で、猫はどういう存在なのでしょうか? 少なくともあけみちゃんを拾ったら、猫の漫画描きませんかって言われたというのは、すごく大きい巡り合わせだと思います。自分の食い扶持を持ってやってきたあけみちゃんはほんと優秀です。
桜沢 そうですね。あけみが来たことで『シッポがともだち』シリーズが誕生し、カッチーとベンも加わってエッセイ漫画として18年も続きました。そのコたちがみんな旅立って、少し間は空きましたが、グレ、ルル、メロとまた3匹になって、今は『もふっとさせて』(ホーム社)でこの3匹のことを描いていますから、本当に猫たちは自分の食い扶持くらいはみんな稼いでくれてるかな(笑)。でも、結果的にネタになっているだけで、私にとって一番大きいのは、心と暮らしに潤いを与えてくれる存在だってこと。やっぱり、これに尽きます。
加藤 ありがとうございました。
◆一筆御礼 ~対談を終えて
漫画家さんの知り合いは何人かいますが、皆、どちらかというと寡黙です。桜沢さんもどことなくそんな印象を受けました。