複数省庁にまたがる政策課題について、関係する閣僚が協議して、閣議に諮る案をまとめる委員会。民主党が2009年8月の衆院総選挙で、政治主導の政策決定を目指す政策の一つとして公約したものである。なお、民主党、社民党、国民新党の政策の調整のために、党首クラスが構成員の基本政策閣僚委員会が発足した。自民党が加わった政権時代には類似の機関として関係閣僚会議があったが、閣僚委員会には、閣僚会議とは異なり、関係する官僚が出席しない。閣僚委員会は、イギリスのCabinet committeeにあたり、イギリスでは、民主党の理解とは反対に、Cabinet Committeeこそが閣議の空洞化をもたらしているものと理解されている。イギリスでは内閣の重要な仕事はCabinet Committeeでなされており、閣議に諮られるのは主要な戦略的な争点だけである。09年8月総選挙用の民主党のマニフェストには、「各大臣は、各省の長としての役割と同時に、内閣の一員としての役割を重視する。『閣僚委員会』の活用により、閣僚を先頭に政治家自ら困難な課題を調整する。事務次官会議は廃止し、意思決定は政治家が行う」と明記された。
鳩山由紀夫内閣は、成立直後に予算に関する閣僚委員会と、環境に関する閣僚委員会を設置した。前者の第1回の会合は9月18日の閣議開催前に開かれ、鳩山首相のほか、菅直人副総理兼国家戦略担当相、藤井裕久財務相、仙谷由人行政刷新担当相、平野博文官房長官の4人が出席し、補正予算見直しの方針を決定した。また、後者は9月20日に開催され、鳩山首相、平野官房長官、小沢鋭仁環境相、岡田克也外相、直嶋正行経済産業相、藤井財務相、赤松農相、前原国土交通相、そして、官房副長官が出席し、国連気候変動サミットで鳩山首相が発信する「鳩山イニシアチブ」を決定した。これらの委員会のほか、防衛大綱の見直し等に関する閣僚委員会や防衛力整備に関する閣僚委員会なども随時設けられている。また、閣僚委員会の下に検討チームを置く場合もある。地球温暖化問題に関する閣僚委員会は09年10月7日に、「国民負担の試算」「途上国支援」「排出量取引」の三つの副大臣級の検討チーム設置を決めている。
政権発足当初多くの閣僚委員会が設置されたが、時間の経過とともにその形骸化がいわれている。ちなみに、11年に首相が出席した閣僚委員会は、予算編成、包括的連携、経済連携協定、そして地球温暖化問題に関する閣僚委員会の四つである。