タイトルを見てこの記事を読んでいるあなたは、なんらかの不調を抱えているのではないだろうか。もしくは、病気への不安。
そしてこれを読んでいるあなたは、中高年ではないだろうか。若かりし頃、「病気」や「健康」で盛り上がる中高年がまったく理解できなかったが、我々もそろそろ「恋バナ」より「不調」「病気」「老いの兆し」の方が盛り上がる年頃のようである。
ここで自己紹介すると、私は1975年生まれ、49歳の文筆業。独り身のフリーランス。
今回は、そんな私がある難病と診断されたことについて、書きたい。
始まりは、まぶたの腫れだった。
2024年8月14日、朝起きると、まぶたがもう、パンッパンに腫れていた。
先日亡くなった漫画家・楳図かずお氏の「赤んぼ少女タマミ」並みに腫れている(中高年以外は検索してください)。そして全身を包む、異様なほどのだるさ、倦怠感。
頭に浮かんだのは、「昨日、飲みすぎたかな?」ということだった。
その前日は、平野悠さんの「生誕80年祭り」に参加していた。平野さんとは、サザンオールスターズや坂本龍一などを輩出したライヴハウス「ロフト」の創設者。そんな平野さんと私は30年近く前からの「腐れ縁」で、私がデビュー前、トーク居酒屋の「ロフトプラスワン」(東京・歌舞伎町)に通っていた頃からの仲。03年、イラク戦争が始まる直前には一緒にイラクまで行っている。
そんな平野さんが80歳になるということでロフトプラスワンで開催されたパーティーには、ミュージシャンや文化人が集結。途中でロフトプラスワンからライヴハウス「新宿ロフト」に移り、タクシーで帰宅したことは覚えている。が、それほど深酒した記憶はない。なのに、鏡の中には「タマミ」そのものの腫れ上がったまぶたの女。
もともと、まぶたの腫れなどの「異様なむくみ」は昔からあった。そもそもアトピー、アレルギー性鼻炎、喘息という三重苦の身。原因はわからないけど起きたら顔の治安が最悪、なんてことはよくあったのだ。
当然、そんな日は誰にも会いたくないしどこにも行きたくない。腫れはなかなかひかないからだ。しかし、どうしたって出かけなきゃいけないこともある。大抵の人は私の顔に興味などないか、もしくは違和感を持ってもスルーしてくれる。が、そうでない場合もある。
ある集まりに行った際には、初対面の人(高齢の女性)に「偽者扱い」されたこともある。「あなたは写真で見た雨宮さんと似てるけど、顔がどう見ても違う」と言い張るのだ。しかも、何度も怪訝そうに顔を覗き込みながら。
こっちはそう指摘されてもなんとも言えずに戸惑っていたのだが、その人は「騙されてはいけない」という使命感があるのか、「本当に雨宮さんなら、本人だと証明してみて」とまで言い張る始末。私が私であることの証明。えっと、それを今この場でどうやってすればいいのだろう……。思わず哲学の森に迷い込みそうになったのだが、そんな失礼な人にはデカルトもびっくりだ。
それだけではない。たまたまそんな「むくみ絶頂」日の写真がSNSなどで出回ると、知らん奴が「お太りになりました?」とか書いてくる。本当に、余計なお世話としか言いようがない。
さて、そんなふうに「まぶたが腫れる」ことで散々嫌な目に遭ってきた人生だったのだが、この日の腫れは常軌を逸していた。今までとはレベルが違うのだ。そしてこのような腫れは、この1、2カ月、何度か体験しているものでもあった。
いや、腫れるだけでなく、思えば7月頃から、異様に目が痒かった。
痒いだけでなく痛みもあり、ものすごい違和感があるのでしょっちゅう目薬を差すものの治らない。もしかしたらまつげが眼球に刺さってる? と思い、悲鳴を上げながら何度もまつげを抜きまくった結果、下まつげがほぼなくなり、24年夏の思い出が「まつげを抜く」だけになりそうなほどだった。
それでも痒みは全く収まらない。そのうちにしょっちゅう結膜炎になるようになり、出かける時も結膜炎の目薬を手放せなくなっていた。
それらのことを思い出し、「ドライアイ」という言葉と同時に頭に浮かんだのは「シェーグレン症候群」という言葉だ。
何年か前、ドライアイ、ドライマウスなどを引き起こす病気にシェーグレン症候群というものがあると知ったのだ。本当に、偶然のことだった。
もしかして、それなのかも。というか、この目は絶対、何かが起きてる。
そう思った時、数カ月前から「唾液腺の腫れ」が気になっていたことを思い出した。最初は「二重顎?」と思ったものの、この1年ほどで私は7キロの減量に成功(しかも毎日の飲酒は欠かさずに)。なのに、顎の下にふたつの膨らみがある。ここにあるのは確か唾液腺。腫れてるってことだよね? そう思いつつも、痛くも痒くもないので放っておいたのだ。
もしかして、これも何かの症状? でも、シェーグレン症候群だとして、それってどこの病院行けばいいの? 何科?
そう思って検索すると、シェーグレン症候群は膠原病の一種ということで、指定難病のひとつ。
なんかオオゴトになってきたかもと思いつつ近所の病院のサイトをいくつか見ると、そのひとつでは膠原病も診ているとわかり、数日後、病院へ。
結果からいうと、予感は的中。シェーグレン症候群という診断が下されたのだった。
流れを記録すると、シェーグレン症候群かもと伝えて血液検査をした結果、数値的にそれで間違いないとのこと。二度目のさらに詳しい血液検査でも同様の結果だった。
ショックと言えばショックだったが、自分から「そうかも」と思っていたこと、また命に関わる病気ではないということは知っていたため、冷静だった。
ここで改めてシェーグレン症候群について調べたのだが、前述した通り膠原病の一種で、症状はドライアイだけでなく口や鼻などの乾燥、声枯れにまで及び、ひどいだるさや倦怠感などもあるとのこと。免疫系が誤って自分を攻撃する自己免疫疾患とのことで、思わず「またか」と口にした。先に私がアレルギー三重苦であることを書いたが、これらも免疫の異常。私の免疫系は誤作動を起こし、自らを攻撃するという余計なことをずっとしでかしていたのだが、さらに攻撃範囲を広げたようである。