予選突破は当確!
「5大会連続ワールドカップ出場は既定事実」そう言い切っても過言ではないと、私は思っている。問題は、いつ決まるかだけだ。
2014年ブラジル大会を目指すワールドカップのアジア最終予選は昨12年の6月にスタート、11月までに全10節のうち6節を終了した。日本、オーストラリア、イラク、オマーン、ヨルダンのB組5カ国のうち、11月に試合がなかったオーストラリアを除く4チームはすでに5試合を消化、残りは3試合となっている。
この時点で日本は勝ち点13。2位のオーストラリア以下に大きく水を開け、完全独走態勢にある。3位はイラク。
日本とともにワールドカップ出場の有力候補と言われていたオーストラリア(この組の第1シード)が4戦して1勝2分け1敗、勝ち点5と苦しんでいるのに対し、日本は4勝1分け無敗。この明暗は日程の偏りによるものだった。
有利な日程で首位快走
昨年の5試合のうち日本は3試合をホームで戦った、6月のオマーン戦(3-0)、ヨルダン戦(6-0)、そして9月のイラク戦(1-0)である。アウェーは6月のオーストラリア戦(1-1)、そして11月のオマーン戦(2-1)だった。それに対しオーストラリアはこれまでの4試合のうち3試合がアウェーだった。6月のオマーン戦(0-0)、9月のヨルダン戦(1-2)、10月のイラク戦(2-1)。ホームはただ一つで、それが6月の日本戦(1-1)だった。
B組5チームのうち3チームは中東の国。6月から9月は猛暑の時期にあたり、10月もまだ暑さが厳しい。日本がオマーンと戦った11月はかなり暑さがやわらいだ時期だったが、それでも気温の高さの影響は小さくなかった。オーストラリアの最大の「敵」は、まさに中東の暑さだったのだ。
それに対し日本は昨年中に中東勢とのホーム3戦を6月と9月にこなし3戦全勝、アウェーは11月のオマーン戦だけ。この試合を岡崎慎司(シュツットガルト)の劇的なゴールにより2-1で勝ちきったことで、圧倒的に有利な位置に立つことができた。
ヨルダン戦引き分けでも可能性
5チーム中2チームに自動的に「ブラジル」への切符が手渡され、3位になるとアジアのプレーオフを経て南米予選5位のチームと最終プレーオフを行うことになっている今回の予選。現時点で日本は「3位以内」を確定している。そして「2位以内」が決まるのも、時間の問題にすぎない。3月26日(火)に行われるヨルダンとのアウェーゲーム(アンマン)で勝ち、勝ち点を16に伸ばせば、2位以内が確定する。ヨルダン(3試合を残し勝ち点4)は、この試合で勝てなかったことで日本を追い抜くことが不可能になり、残り3試合(勝ち点5)のイラクとオマーンは、そのすべてに勝っても14にしかならないからだ。
さらにヨルダン対日本が引き分けに終わった場合でも、同じ日にシドニーで行われるオーストラリア対オマーンも引き分けたときには日本の2位以内が確定する。この日の結果でヨルダンとオマーンが日本に追いつけないことになり、日本を抜く可能性が残るのはオーストラリアとイラクだけとなるが、両者の対戦が残っている(6月18日)ため、両者がそろって日本を抜くことはできないからだ。オーストラリア対オマーンは19時30分キックオフ。ヨルダン対日本は17時キックオフ。しかしシドニーとアンマンの間には7時間の時差があり、日本代表がホテルを出発するころにはシドニーの試合の結果が出ているはずだ。
中東にオーストラリアの壁
「ワールドカップ出場は既定事実」という冒頭の言葉は、残り4試合のオーストラリアはともかく、他の3チームは残り3試合のうち一つでも引き分けたらそこで日本を上回ることができなくなるという状況で、3チームすべてがオーストラリアとのアウェーゲームを残しているからだ。日本が何もしなくても、日本を追うオーストラリアがせっせと他の3チームの可能性を「刈り取って」くれるだろう。だが日本代表を率いるアルベルト・ザッケローニ監督は、「まだ何も決まっていない」と、ヨルダン戦に全力を傾ける姿勢を崩していない。万全を期したスケジュールをたて、3月の18日ごろに日本代表選手を中東・カタールのドーハに集め、時差調整と気候順応のトレーニングを行う。そして22日にはカナダとの親善試合を行って、試合の2日前、3月24日にヨルダンの首都アンマンに乗り込む予定をたてている。
不安材料は長友、本田の欠場
2月6日に神戸で行われたラトビアとの親善試合では、DF(ディフェンダー)今野泰幸(G大阪)以外の先発10人を「海外組」で固め、3-0で快勝した日本代表(得点者:岡崎2点、本田圭佑1点)。立ち上がりはややぎくしゃくしていたが、前半15分を過ぎるとコンビネーションがスムーズになり、ほぼ「ベスト」の布陣に戻した後半には相手を圧倒して押し切った。昨年11月以来約80日ぶりの試合のなかで、忘れかけていた連係を思い起こさせるのに十分な試合だった。ただ、その後DF(ディフェンダー)長友佑都(インテル・ミラノ)とMF(ミッドフィールダー)本田圭佑(CSKAモスクワ)がともに故障でヨルダン戦のメンバーからはずれたのは、小さからぬ不安だ。とくに大きな体でボールをキープできる本田の不在は、もうひとりの攻撃の切り札である香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)の力を引き出すためにも非常に重要な要素なので、影響は小さくない。
残り2戦も日本優位か
ヨルダン戦が終わると、残りは6月4日のオーストラリア戦(埼玉スタジアムで開催の予定)と、1週間後、11日のイラク戦(カタールのドーハで開催予定)の2試合のみ。オーストラリアは一昨年に日本とアジアカップ決勝を戦ったときと比較すると明らかに戦力が落ちており、ロングボールに頼るサッカー以外に対日本の活路を見いだせない。6月に灼熱のドーハでイラクと対戦しなければならないのは大きな難関だが、勝ち点が必要という状況であれば、全選手が力の限りを尽くすだろう。私は、3月26日にワールドカップ出場が決まる可能性が高いと考えている。そしてイラク戦からそのままブラジルに飛んで挑むFIFAコンフェデレーションズカップ(ブラジル、イタリア、メキシコと対戦)では、2014年のワールドカップを想定し、ザッケローニ監督がいちだん高いレベルの戦いにチャレンジしているはずだ。